天台宗について

法話集

No.57感謝することを知る

 「批判ばかり受けて育った子は非難ばかりします」「ほめられる中で育った子はいつも感謝することを知ります」
 これはドロシー・ロー・ノルト作「アメリカインディアンの教え」という詩の中の一節です。日頃私たちは、長所を伸ばしていこう、短所は慎んでいこうと考えています。ですからほめることによって長所を育て、指摘することによって短所を治そうとします。それは私たちが、そうすることによって人が育ち、世の中が良い方向へ動くということを知っているからです。
 しかし現実はどうでしょう。他人の成功をうらやみ、その人の悪口を言うことで自分の評価が上がると錯覚している人が、いかに多いことでしょうか。
 ほめる前からけなしてしまう、それはアクセルを踏む前からブレーキをかけてしまっているのと同じことなのです。短所は誰にでもあるもので、たしかにそれは慎んでゆかねばならないものです。しかしその芽のすべてを、批判によって治すことは出来ません。その上短所は長所に比べて目につきやすいのです。一つの短所が無くなったかと思うと、新たに別の短所が見えてきたりもします。
 もともと長所と短所というものは、同じ性質のものが形を変えて表れている場合が少なくありません。例えば「大雑把(おおざっぱ)でいい加減な人」は「おうようでこだわらない人」「こまかくてお節介な人」は「きちんとしていて世話好きな人」といった具合にです。そのように長所も短所も見方の違いによるものならば、いっそのこと悪いところはそこそこに、まずは良いところをほめて伸ばしてあげた方が、どんなにかよいことでしょう。
 批判ばかり受けて育った子も、ほめられる中で育った子も、やがては大人になり親になっていきます。その時の彼らの社会を想像してみて下さい。他人の非難ばかりしている社会が幸せか、いつも感謝することを知っている社会が幸せか、アメリカインディアンたちはよく知っていたのだと思います。
掲載日:2008年11月19日

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