天台宗について

法話集

No.36お塔婆について

 ストゥーパのことを漢字で表現して卒塔婆(そとば)〈率塔婆〉といっていますが、ストゥーパとはお釈迦様のお舎利(しゃり)をおまつりする塔のことをいいます。お釈迦様の入滅後、お徳を慕い、教えを心の拠りどころにしている人々が舎利〈釈迦のお骨〉を泰安する塔を建て、お釈迦様がいますがごとく塔を中心に集い、お釈迦様のこの世への出生、成道、涅槃について深く考えました。それによりますと、お釈迦様は真如(しんにょ)〈真理〉の世界からこの迷いの世界に衆生済度(しゅじょうさいど)のために現れた仏様であり、入滅して再び真如の世界に帰還されたお方で、真如そのものであると考えたのです。したがって、真如から来られたという意味で如来ともいいます。真如〈真理〉は普遍的でなければなりません。限定された時代、限られた地域だけの真理だとしたならば、真理とはいえないからです。その時その場所で正しくても、時と場所によって変わるようでは信頼をおくことができません。したがって、真理が時間と空間を超越しているように仏様も永遠なのです。そして、普遍的でありますから、どのような時にも、いかなる所にも行き渡っている存在でなければなりません。宇宙に遍満(へんまん)しているのです。そこで、卒塔婆で宇宙に遍満している姿を表そうとして、形作られたのが五輪塔です。インドでは古くから宇宙を構成しているものは、地・水・火・風・空の五つの要素であるという思想がありました。宇宙全体を示すのに相応(ふさわ)しいので、卒塔婆にその形を取り入れたのです。
 卒塔婆は宇宙に遍満している真理を表し、その真理が仏様なのだということを私たちに示そうとしているのです。ですから、いつでもどこにでも仏様はいらっしゃるばかりでなく、「一切衆生悉有仏性」(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)といって、生きとし生ける者すべてに仏性があるのです。
 皆様が墓参の折にお塔婆を墓地に立てるのは、宇宙の真理に触れ、仏性を開発させて、より良い意義ある人生を歩もうと誓い、仏の加護(かご)を祈るためなのです。そして、その祈りが自分の安楽だけでなく、亡き人の成仏はもとよりですが、生きとし生ける者の安寧(あんねい)を願うことを忘れてはなりません。
掲載日:2007年02月26日

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