天台宗について

法話集

No.234分かち合う心で

 令和5年10月10日。中秋の名月も過ぎましたが、今年は、例年以上に連日猛暑が厳しく、いまだに夏日の気温が見受けられます。私たち昭和生まれは「体育の日」として慣れ親しんだ祝日です。世界規模で流行した疫病「コロナ」も、ようやっと落ち着き始め、大勢の国内外の観光客が行楽地に見受けられるようになりました。各々、秋を満喫し心豊かな時間を過ごしたいです。

 秋と言えば、スポーツの秋、芸術の秋、そして食欲の秋。食いしん坊の私は「食欲の秋」です。ついつい食事の味や見た目などに心を奪われてしまいがちですが、食に携わってくださった方々への感謝や、食材の命を頂く思いを忘れてはなりません。
 また、仏弟子は、食事の前に「斎食儀」と言うお経をお唱えします。その中の「出生食偈」と言う偈文を紹介いたします。

「汝等鬼神衆 我今施汝供 七粒遍十方 一切鬼神供」

 訳すと、「鬼神などのみなさん 私たちは、あなた方に ほんの少しですが、この食事を お裾分けします 全ての鬼神と共にしましょう」すなわち、七粒のご飯「生飯(さば)」をお供えすると言うことは、たとえその全てが自分の物であったとしても、自分一人で恩恵を受けるのではなく、いつもみんなで分かち合いましょう。との教えです。このみ教えを食事の際に、お唱えし実践することが、布施の第一歩です。

 日々のニュース報道で、イジメ、差別、強盗、傷害、殺人などの私利私欲のために繰り返される犯罪や、世界各地での、国家間の紛争や悲惨な争い、爆撃などの報道が繰り返されています。
 わたしたちは、今一度、生飯の心。相手を思いやり、分かち合う心の大切さを再確認して、この地球という小さな星の、同じ時代を生きるすべての生き物が、共に笑顔で平和に過ごせる日々のために、精進したいものです。


(文・岡山教区 圓乘院住職 西野 祐誠)
掲載日:2023年12月01日

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