天台宗について

法話集

No.198幸せに生きる

 法華経の教えに生きとし生けるものはすべて仏になることが出来ると説き、この世のすべてのもの、私たち人間も動物も草木もすべてに尊い命があり、差別なんて無い、無駄なんて無い、みんな一緒だと。
 全ての命はみんな平等だと考えます。

 幸せはなぜ平等に与えられていないと思われているのか?
 今の世の中お金があれば何でも出来る時代です。美味しいものを食べたり、旅行したり、車を買ったり…欲しいものがあればすぐに買って自己満足します。
 これもたしかに幸せかもしれませんが、仏教では、物質的幸せに生きるよりも心を豊かに生きていくことのほうが幸せだと説くのです。
 幸せに生きていくためにどうすればいいのでしょうか。仏教では常に四つの広い心を持って日常生活を過ごしなさいと言います。
 四つの広い心とは四無量心と言い慈悲喜捨の心です。

慈(いつくしみ)
 親が子を思う気持ち、兄弟姉妹が仲良く過ごす、利害損得を離れて和やかな気持ちで過ごしなさいと。お釈迦様が説いています。
 一切衆生は我が子なり…みんな我が子だと思って接しなさいと。

悲(かなしい)
 私たち人間は悲しんだり苦しんだりして生きているのです。そんな人に出会ったら、その人の立場になって共に悲しんだり、苦しんだりしなさいと。思いやりの心を持ちなさいと。

喜(よろこぶ)
 相手が楽しんだり、喜んだりしている時に共に楽しんだり、喜んだりしなさいと。温かな心の持ち主になりなさいと。

捨(すてる)
 私たち人間は、相手が悲しんだり、苦しんだりする姿を見て喜んだりします。相手が楽しんだり喜んだりする姿をみた時に面白くない気持ち、嫉みの気持ちを起こしたりします。そんな気持ちを捨てなさいと。誰かに何かあげた時、きっとあの人は何か物を返してくれるにちがいないと思ったりするのです。見返りをもとめる心を捨てなさいと。これらはすべて執着する心なのです。この気持ちを捨てなさいと。

 伝教大師様もおっしゃっております。
「悪事を己に向け好事を他に与え己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」
 嫌なことでも引き受け、善いことは人に分かち与える。自分の得は忘れて他の人の為につくすことが本当の慈悲なのです。
 一人一人が心豊かな人間になり、平和で明るい世の中を築いていくことが幸せに生きるということなのです。
 心豊かな人々が多くなることを願い、すべての人々が幸せを感じて生きられる社会を実践していくことが大事なのです。


(文・北海道管内 眞言寺 藤原 智弘)
掲載日:2020年10月01日

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