天台宗について

法話集

No.178不滅の法灯は自分の中にある

 比叡山延暦寺根本中堂の不滅の法灯・消えずの法灯は開山以来1200年以上、今日も絶えず参拝者がお参りする、天台宗のシンボルだと思います。菜種油を燃料に灯芯が浸り、火が点る。原始的な単純な構造です。毎日毎日世話をし、消えないよう、消さぬように油断無く守られています。或る意味、単純作業・簡単な事を大切に守り続けると大変な成果・素晴らしい事に成る証と言えると思います。

 私はこう思います。不滅の法灯は私達、人々の心にも点っていると。人間は他人に優しく出来る、素直にありがとうと言える、美しい心が人間本来の姿、何の見返りも求めず人助けをする、被災地へ出向きボランティア活動するような、素晴らしい行動をするのが本来の人間の姿だと思います。
 しかし、現実は時とて、我勝ちな、他人に迷惑な行動を取りがちです。そんな時にこそ、我が祖、伝教大師の言われた『己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり』を思い出してほしいのです。自分の事は少し置いといて、他の人へどうぞと譲る事、それが仏様の言われる慈しみ、慈悲心の最たるものです。己を忘れて他を利する、言うのは簡単ですが、実行するのは容易ではありません。

 不滅の法灯をずうっと守ってゆく、誰にでも出来る単純作業、その事を守り続けていくのは大変です。不滅の法灯とは私達人間の心、本来の素晴らしい行動をとる、仏様に成る素質、仏の種と同じものと思います。少し小さい、少し頼りない小さな明り、いつも点っているけど、ちょっと忘れがちな大切な美しい明りだと思います。

 己を忘れて他を利する。言うは易く行うは難い。常に行うのは大変、忘れがちです。そこで一つのフレーズとして覚えると、いつでもすぐに思い出せます。己を忘れて他を利するは漢字で『忘己利他』の4文字です。この4文字を繰り返し繰り返し、そして少し早く言います。忘己利他、忘己利他・・・・・・“もうこりた”そう、“もうこりた”と覚えやすくなり、又、少し笑えます。
 この笑いが大事です。物事が思い通りにならずいらいらした時に“もうこりた”を思い出せばイライラが治まります。怒っていた自分が笑え、皆お互い様だったと気付けます。冷静な自分にもどれば、忘己利他を実行出来ます。世の中の人々が皆、忘己利他を実践すれば、人々は皆、仏様、この世の中は仏国土となります。伝教大師の言われた『忘己利他』の精神で日々を生きて行きたいと思います。


(文・栃木教区 圓満寺 入澤 純宣)
掲載日:2019年01月01日

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