天台宗について

法話集

No.222師走に思う

 この原稿が掲載されるのが12月1日と伺っています。同日、今年で36回目の『全国一斉托鉢』が行われています。故 山田惠諦天台座主猊下が自ら先頭にお立ちになり、比叡山麓門前町坂本を浄財勧募にあたられた事に始まります。托鉢の日に合わせて玄関でお待ちくださる方も多くいらっしゃり、寄せられた浄財やお米などは、NHKや社会福祉協議会などを通じ寄託されます。お米は、僧侶が身に着けるずた袋に入れてお預かりすると、ずっしり重く感じます。その重さは、1粒1粒、お米の成り立ちを感じずにいられない貴重なものです。

 新型コロナウイルスの発生から、私たちの生活環境も大きく変化し、ウクライナ情勢等による現代生活に欠かせない商品の物価が高騰。人が生きる為には『食』が必要でありますが、発展途上国を中心に、約8億人が清潔な水、十分な量の食べ物を口にできず、栄養不足で苦しんでおられます。そんな中日本では、食べ残しや、まだ食べられる食品が破棄され、その量は1年間で約612万トン。実に東京ドーム約5杯分もある現実。国民1人あたりに換算すると、毎日お茶碗1杯分の食糧を捨てている事になるそうです。余った食べ物は、加工、流通、家庭などから生ごみとして出され、最終的に可燃ごみとして焼却され、多くの二酸化炭素を排出し、環境負荷が続いています。現在、食品ロス、貧困、地域環境の悪化の削減などに向けて、2030年までの達成を目指す国際社会共通の持続可能な開発目標(SDGs)として17項目のゴールと達成基準が示され、取り組まれています。

 この取り組みは、まさしく伝教大師の教えの実践であります。身近な活動目標である『一隅を照らす』の3つの柱、生命(あらゆる命を大切にしよう)、奉仕(みんなのために行動しよう)、共生(自然の恵みに感謝しよう)を実践する事により、目標に繋がって行きます。改めて、1人ひとりにできる事から、努めて参りましょう。


(文・延暦寺一山 乗実院 真嶋 全康)
掲載日:2022年12月01日

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