天台宗について

法話集

No.139あなたは幸せですか?

 「あなたは幸せですか?」という質問に、97%もの国民が「幸せ」と答えるという国、ブータン。その様子を知りたくて、私は2度、ブータンを訪れました。昨年の二度目の訪問では、前回よりも余裕をもって国民の幸福度を目の当たりにしました。まず、いたるところで国王の統治の素晴らしさを話していました。医療や教育がすべて無償で平等に受けられるようになっているので、そう感じるのは当然かもしれません。また、多くの人が口にするのは、「来世の幸福を得るために無駄な殺生をしない、他人に対して親切にする」、という教えでした。さらに最も大事なものとして、「両親、ご先祖様をはじめあらゆるものに感謝すること」を多くの方が挙げています。そして、その感謝の気持ちを持ち続けることは、自分の幸福に欠かすことのできないことだと。

 今日まで世界中の政治家や経済学者は、人々の幸福には経済の発展と物質的な充足が不可欠であると考えてきました。しかし、ブータンはそれに反して、物質的な満足が必ずしも幸福につながらないと主張し続けてきました。

 さて、日本はどうでしょうか。ある国際調査機関の幸福度調査によると、日本の幸福度は先進国の中で最下位だそうです。幸福度は調査の方法や基準によっていろいろな結果が出ますので、私は生の声を求めて法事の席や法話会等でこんな質問をします。
 「今、幸せな人は手を挙げて。」手が上がるのはおよそ半分。今度は質問を変えて、「今、着ているのは自分の服ですか?」「昨夜は屋根のあるところで寝ましたか?」「朝ごはんは食べてきましたか?」それらの質問には、ほとんどの人が「はい。」と答えます。つまり、衣食住は足りているのに、半分の人は幸福を感じられないのです。結局、私たちが求めてきた幸福とは何だったのでしょうか。そして、どうしたら幸福を感じることができるのでしょうか。そのヒントはブータンの人たちが口にする「感謝」にあるようです。一日のうち、少しでも楽しかった、うれしかった、有り難かった、面白かったと思えることがあったら、そう感じることができたことを感謝する。不満、不足を考えるときりがありません。かといって、待っていても明日、幸福がやってくるというわけではありません。そして一度手に入れた幸福が永遠に続くこともありません。その時々にあらゆるものに感謝して、「少欲知足」と自分に言い聞かせて、幸福な自分を作ってみませんか。


(文・神奈川教区 泉福寺 浮岳 堯仁)
掲載日:2015年10月01日

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