天台宗について

法話集

No.69成道会

 十二月八日と言いますと、大正から昭和の初めの頃に生まれた方々は、すぐに太平洋戦争〈第二次世界大戦〉の始まった日と答することが多いと思います。確かに、昭和十六年十二月八日は、太平洋戦争が開戦された日であります。それは月曜日の朝三時、日本軍攻撃部隊飛行機二百機が、ハワイ真珠湾に対し攻撃を行った日で、アメリカ軍に不意討ちを仕掛け、甚大な被害を与えた日であります。これは、とても不幸な出来事でありました。
 しかし、我々仏教徒にとりましては、それとは別に、大変意義深く重要な日なのであります。それは、この日が「成道会」(じょうどうえ)という日であります。
 これは、今から約二千五百年ほど前に、インドの一地方の王子としてお生まれになったシッダルタ〈後のお釈迦様〉が、その地位を捨て、妻子を捨て、二十九歳で城を出て、修行者の群れに身を投じ、難行苦行を重ねました。しかし、この世の中の生・老・病・死の苦しみから抜け出すことは出来なかった。六年間も続けた苦行を止め、尼蓮禅河(にれんぜんが)で身体を洗い清め、村の娘スジャータの乳粥の供養を受け、菩提樹の下に座って瞑想にふけりました。その間、いろいろな悪魔に悩まされ続けましたが、その悪魔を追い払い、十二月八日の日の出前、明けの明星を眺められ、悟りを得られたのであります。
 お釈迦様が、この世の中の苦しみを如何に滅するかという最大の課題を、遂に解決することが出来たのがこの日なのです。
 いわゆる、悟りを開かれたのでありますが、お釈迦様が三十五歳のとき、明けの明星の美しく輝く時であったといわれており、これ以後、シッダルタ太子を「仏陀〈ほとけさま〉」といいます。
 仏陀は、この日の悟りの喜びを、自分だけのものとしないで、人々に弘めようと決意され、かつて同じ修行をし、仕えてくれていた五人の修行者に伝えようと、彼等のいるベナレスに向かって出発しました。
 仏陀によりますと、人間は二つの極端に陥っていると考えました。ある人は快楽を追い求め、またある人は苦行に身体を苛(さいな)んでいる。その両方とも悟りに至ることは出来ない。苦と楽の両極端を捨てて中道を選ぶ、即ち「調和のとれた努力」を続ければ悟りが開けるということを弘めていったのであります。この悟りの境地に入られたことを記念する法要が「成道会」であります。
掲載日:2009年11月26日

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