天台宗について

法話集

山川草木 仏の世界

 比叡山延暦寺根本中堂は、中堂造りの世界遺産です。根本中堂の中陣から内陣のご本尊薬師瑠璃光如来は同じ目線で拝せられます。見上げる、見下ろす、そういう位置関係からではありません。これは仏凡一如の真理の体現にほかなりません。そして、「明らけく 後の仏の 御世までも 光つたへよ 法のともしび」の不滅の法燈が神々しく輝いています。

 ブータンの人たちは「一粒の米に宇宙を思い」、仏教を厚く信じておられます。一粒の米粒は「地・水・火・風・空」の働きによって、発芽し、開花し、実を結びます。自然の摂理が働いて、生きとし生けるものの存在があるのです。土、水、日光、空気を人間が造り出すことはできません。私たちはそのことを重く受け止めなければならないのです。

 愛知県専門尼僧堂堂長の青山俊董さんは「アメリカの国立公園の父と呼ばれているジョン・ミューアが〈一輪のスミレのために地球がまわり、雨が降り、風が吹く〉といっているように、一輪のスミレを咲かせる背景に天地総力をあげてのお働きがある。地上の一切のものがこの天地総力をあげてのお働きを平等にいただいて、それぞれの生命のいとなみがある」と、言っておられます。これも「一粒の米に宇宙を思い」という真理に通じるものです。

 良寛禅師は、「あは雪の 中にたちたる 三千大千世界(みちおうち) またその中に あは雪ぞ降る」と詠じられました。「春の雪が降ってくる空を見上げると、やがて大宇宙があらわれてくる。その宇宙をじっと見つめると、中に淡雪が降っているではないか・・・・。およそものの尺度など相対的だと説く仏教の宇宙観だ。ケシ粒一つに世界が入るという禅問答もあるが」(毎日新聞-「余録」-)。これも仏教の哲理として信じたいものです。

 「秋穂高 画竜点睛 飛雲舞う」、これは北アルプス、上高地の河童橋で、山川草木悉皆成仏の教えを思いながら私が詠んだ句です。上高地で山川草木と言えば、穂高連峰、梓川、二輪草、化粧柳を目にうかべます。そして、「峯の色 谷のひびきも 皆ながら わが釈迦牟尼の 声と姿と」という道元禅師の歌を思い、上高地の自然に仏を感じているのです。

 〈山川草木 仏の世界〉 それは実在し、目の前に広がっているのです。


(文・滋賀教区 西光寺 森本 光瑛)
掲載日:2019年09月01日

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