天台宗について

法話集

No.213お月さま

 月を眺めるのが好きです。月光に照らされていると不思議な気持ちになります。心を浄化してくれているような感覚と、妖気というか狂気のようなものが沸き上がってくる感覚があります。満月に向かって吠える気持ちが痛いほどわかります。時には心をさらけだして月に向かって吠えたくなることもあるのです。さすがに毛は生えてきません。確認していませんが、月に吠えている時に胸毛がちょっと位伸びているかもしれません。

 昔から世界中の人々が夜空に浮かぶ月を大切にしてきました。月に恋焦がれてきました。日本では月にウサギの姿を思い浮かべ、竹取物語では姫は月に帰っていきます。「涅槃図」を見てみると、上空には満月が描かれています。自分の生命の終焉を悟っていたお釈迦様は、自ら満月の日に沙羅双樹の下で眠りにつくことを選んだと言われています。

 月の誕生は地球の誕生(約46億年前)から少し後のこと。現在有力な説として、地球創世記以降に衝突した巨大隕石等が宇宙空間に散乱し、地球の周回軌道上で集まった塊が月となり重力が発生。周回軌道から飛び出そうとする遠心力と、新たに天体となった月の重力と地球の重力が引き合った結果として、約45億5000万年にはほぼ現在の配置となり、地球と着かず離れずの距離で周回しています。
 月の重力は地球への影響も強く、潮の満ち引きだけでなく、天候や農業や人体へも影響があります。新月や満月のときは太陽・地球・月が一直線上に並び、重力バランスの変化が地球にも大きな影響を与えます。植物は満月の前に芽が出ると順調に育つといわれ、昆虫は満月の日に一斉に羽化するのです。私達も影響を受けてないはずがありません。
 月の大きさが違っていたら、さらにはもう少し月が遠くや近くにいたら現在の〝ちょうどいいバランス〟は成り立ちません。地球の軌道も変わってしまい、地表の温度は極端な寒暖を繰り返します。月がいないと地球は生命活動が出来る環境ではなくなるのです。
 太陽-地球-月という絶妙なバランス。お互いが支え合ってまわっている〝輪〟の中で私たちの生命もまわっています。たくさんの奇跡を乗り越えて生かせてもらってまわっているのです。輪の中に悪い感情を流し込んでしまうと「スパイラル」に陥ってしまうのかもしれません。善い感情の輪の中で回り続くことを願わずにはいられません。

「月かげのいたらぬ里はなけれども
 ながむる人の心にぞすむ 法然上人」


(文・山陰教区 柴山 智慶)
掲載日:2022年02月01日

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