天台宗について

法話集

No.231自分軸

 昨今、「自分軸」という言葉をよく聞くようになりましたが、意味合いとしては「周りのことなど気にせず、自分の意志を大切にする」ということで、今を生きる我々にはあらためて必要なことではないかと思います。

 平安時代を生きた人達が一生かかって知り得る情報を、今の令和を生きる我々は、たった一日で知り得る事ができてしまい、その情報を処理するのに大変脳が疲れているといいます。
それに加えSNS、インターネット、報道、他人の意見などに流されて、自分の思い、やりたいことなどを抑え込み生きづらくなっている人もいるようです。

 あるバレエダンスを指導している方からお聞きした話ですが、その方は真面目で熱心な方で、自分が指導している生徒がコンクールに出場する時は必ず入賞させなければならないと思っていたそうです。他にも自分のバレーの技術も実力不足だと思い込んでいたり、偉い先生の意見や評価が気になって仕方がなかったようです。
その思いに囚われてしまい、生徒にも自分にも厳しくなっていき、とても辛くなり、とうとうバレエダンスをやりたくないと思うようになってしまいました。
思い悩み、瞑想をして色々な人と話をしているうちに、バレエダンスを始めた時の楽しさとそれを人に伝える教える喜びを思い出したようで、またダンスをやりたいと思えるようになりました。ダンスも指導も楽しくできるようになり行動が変わり、とても楽になったといいます。
この方にとっては、バレエダンスを楽しみ、その楽しさを人に伝えるということが「自分軸」だったということです。

 お釈迦さまは、最後の言葉として「自灯明、法灯明」という言葉を残されました。
「自らの意志を灯火という道しるべとして、仏法と真理を灯火という道しるべにしなさい」という意味です。
自灯明とは、まさに「自分軸」であり、自分らしく 自分の在り方に従って生きるということです。

 時には、いつも握っているスマートフォンを置き、目を閉じて、ご自分の本当の気持ちを覗いてみてはいかがでしょうか…。


(文・栃木教区 吉祥寺 本橋 亮智)
掲載日:2023年09月01日

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