天台宗について

法話集

No.181行うことは自分を知ること

 皆様も日ごろの自分の行いについて色々とお考えになる事と思います。
 善い行いをした時は、とても気持ちがいいものですし、今後もこんな善い綺麗な心を持ち続けたいと思うことでしょう。逆にうっかり過ちを起こしてしまった時は、自分の失敗に落ち込んだり、自分に腹を立ててしまったりすることもあると思います。
 私たちお坊さんも皆様と同じようなことを思いながら日々を過ごしています。
 お坊さんも人間ですから、善い事をして人から褒められれば嬉しいですし、失敗をして怒られた時は落ち込んだり自分に対してムッとしてしまったりもします。
 以前に若い人から「お坊さんってメンタルが強そう」と言われたことがありますが、皆様から見れば確かにお坊さんは毎日厳しい修行に打ち込むことで自分の心を鍛えているイメージがあるから、そのように私たちが映るのかなと思いました。それと同時に、少しの事で一喜一憂せず、常に堂々として自分の行動や言動に恥じることのない生き方をしていきたいとも感じました。

 私はお坊さんとして仏様の教えを聞いて仏様のような存在になる事を目指し、日々たくさんの人と話をして触れ合っていく中で、まず「自分」を理解していくことに努めています。
 『法華玄義』というお経では「衆生(この世の生き物全て)を知るは広過ぎ、仏の教えを知るは高過ぎ、初学には困難であるため、それらを知りたければ最も身近な己心(自分の心)を対象とすれば容易なことである」としており、人間同士がお互いを理解することも仏様の教えを理解することも「自分」を知ることで成すことができるとしているのです。
 「自分」を知る上で私が心がけている事は次のようなことです。
 人間には煩悩という切り離せない穢れたものがあり、中でも貪(欲しい物に飢える)・瞋(思い通りにならなくてイライラする)・痴(愚かな行い)の「三毒」という、生きていれば誰にでも表れてくる悪い心があります。大切なのはそれらを消すこと以前に、それらが「自分の中に在ること」を知ることなのです。それによって自分が劣っていることでも他人を見本として克服したり、他人の失敗も自分と重ね合わせることで寛容に受け止めることが出来る、ということにも繋がると私は考えます。
 あとは自分が善いと思う行いを「自分」の中から学んでいくことです。
 仏教の思想を短くまとめたものが、『七仏通戒偈』というお経であると考えられています。

諸悪莫作 諸善奉行 自浄其意 是諸仏教
諸の悪をなさずすべての善を行い自らの心を浄めること、これこそが諸仏の教えである

 私はこの教えを根本とし、何事にもひるまず、善かれと思った行動を起こすことが大切だと考えています。
 しかし、善かれと思って行動しても相手が喜んでくれるとは限りません。かえって相手を怒らせてしまうことも有るかもしれません。
 だから、何事も行いについて能く考え、自分自身を能く知ることで、自分の行いに恥じること無く堂々とした行いが出来ると私は信じております。


(文・岡山教区 浄土寺 片岡 憲秀)
掲載日:2019年04月01日

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