天台宗について

法話集

No.67お十夜

 「お十夜」というのは、十月六日から十五日までの十日間に、阿弥陀様が衆生を救済して下さるご恩に対しての感謝の法要であります。それが丁度十日間行われていたので「お十夜」と言った訳ですが、最近では段々と十日を五日に減らしそれを三日に減らし、ついには一夜だけとなり、一心不乱に心を込めて念仏を行うようになってきた所が多いようです。
 この行事を行うようになったのは、お経の中に、「十日十夜、善行を積めば、他の仏を千年拝むより効果がある」と書かれてあり、また別のお経の中にも、「若し南無阿弥陀仏の名号を十日十夜にわたって念仏三昧に精進すれば、阿弥陀様を見ることが出来るであろう。また、必ず安楽国に往生出来るであろう」と書かれております。
 したがいまして、この行事は、十日十夜の間、念仏の修行をすることによって極楽浄土に往生することを願うためのものであります。
 この法要は、日本において始められたもので、白河天皇(一〇五三~一一二九)の時、即ち、今から九百年ほど前に始まったもので、恒例の法要となったのは、室町時代からであります。京都の真如堂(真正極楽寺)において行われたのが最初であるといわれております。
 京都の真如堂は、天台宗の寺院で、天台宗系に伝わったのは勿論のことでありますが、阿弥陀様におすがりするということから、むしろ浄土系の寺院で全国的に盛大に行われるようになりました。
 そして、この法要は、都会では日中だけで終わる所が多いようですが、農村地域では、今でも「お篭もり」といって泊まり込んで行う所もあり、「十夜婆々」という言葉があるように、老婆や中年のご婦人の方々が多いようです。更に、この時期には、新米も収穫していますので、新米や、秋の実りの物を仏前に供え、大勢で持ち寄った食べ物を、皆で食べあう習慣もあります。また、供えられた穀物でお粥を作って食べ、楽しく過ごす地方もあるそうで、これを「十夜粥」と呼んでおられるそうです。
 京都真如堂でのお十夜は、その法要期間中に、門前で蛸(たこ)を売り、これを食べると疫病から逃れられるという言い伝えから、「蛸十夜」と言われ有名であります。
 何れにいたしましても、十月の十日十夜、阿弥陀様のお念仏を唱えたところから「お十夜」の行事が起こり、続けられているのです。
掲載日:2009年09月28日

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