天台宗について

法話集

No.110共生について

 自分以外のものと、共に生きるとは、すてきな言葉です。『山川草木国土悉皆成仏』全てのものは仏の現われであると仏教では考えられています。一つ一つのものは掛替えのない存在です。そして、一つ一つのものが組み合わされると、より一層掛替えのないものとなります。
 例えば植物と蜜蜂の関係はだれもが知っている共生です。これは共生が成立している例ですが、今は成立していなくても、将来、有益な共生が成立する可能性は全ての分野において有り得ます。この可能性を後世に残すためにも全ての分野での多様性を存続させなければなりません。
 共生は一方的な寄生によって始まることが多いと考えられています。両者は永い年月を掛けて、お互いの情報を収集し、自分を変革しながら共生を成立させていきます。つまり
私たちは、共生のために、全てのものの情報収集を積極的に行い自己変革していく必要があるのです。収集した情報を分析することによって両者により経済的な関係を作っていかなくてはなりません。植物にとっては、風を頼りに多量の花粉を作るよりも、蜜蜂に蜜を提供することによって少量の花粉ですませる方がより経済的なのです。
 寄生の関係が共生の関係になる過程を『共進化』といいます。共進化を通して成立した共生は継続させなければなりません。そのためには両者の間に信頼関係が必要です。一度でも植物が蜜蜂にカロリーの無い蜜を提供したならば、蜜蜂はその植物の花へは二度と来なくなるでしょう。
 共生とはだれもが受け入れることの出来る素晴らしい言葉なのですが、成し遂げて継続させるためには不断の努力が必要です。共生は容易く行える事ではありませんが、一プラス一が二以上になる経済効果も有るのです。現代の競争社会において、共生という言葉が有る事だけでも価値が有るのではないでしょうか。

(文・高橋博道)
掲載日:2013年04月24日

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