お盆は、古いインドの言葉ウランバーナ(逆さに吊された苦しみ)からきた盂蘭盆(うらぼん)を略したものです。お釈迦様の十大弟子の一人で神通力第一といわれた目蓮(もくれん)さんが、その力で餓鬼道(がきどう)に落ちて苦しんでいる母のことを知って、驚いてお釈迦様に相談されました。するとお釈迦様は「夏安居(げあんご・夏の修行)がまもなく終わるから、七月十五日に修行を終えた僧に供養しなさい。必ず功徳がありますよ」と教えて下さいました。目蓮さんはその教えのとおり実行して、母をその苦しみから救うことができたそうです。この故事にもとづいてお盆の行事が行われるようになりました。日本に伝えられたのは、今から一千三百年前のことです。
お盆には、亡き両親をはじめご先祖があの世から帰って来られるので、大切におもてなしして、心から感謝を捧げる期間とされ、今では日本の夏を彩る国民的行事になっています。全国的には八月十三日から十六日(東京は七月)にかけて行われ、墓参りのために郷里へ帰る人で大移動が生じます。
けれども、お盆の行事が形式に流れて、生きている我々がどう受け止めるかという大事なことが忘れられているようにも思われます。私達が考えなければならないポイントをあげてみましょう。
- 精霊棚(しょうりょうだな・盆棚)を作り、花や供物 を御供します。
先祖の御霊(みたま)を迎える準備ですが、家族みんなに心の準備ができていますか。亡くなっていく人は、自分で果たせなかったことを後に残る人に実現して欲しいと願っています。幸せになって欲しい。仲良く頑張って欲しい。二度とない人生を悔いなく生きていますか、と問われる時でもあるのです。 - お墓やお寺にお参りします。
きれいに掃除をし、香を焚きくゆらせ、花や供物を供え、亡き人に対面し、精一杯さわやかに生き抜きますと誓いましたか。言葉に出さずとも、心は通い合うのです。本当に大切なのはこの対話です。 - 菩提寺は心のよりどころです。必ずお参りしましょう。
御本尊様にお参りし、先祖代々の御霊を供養し、導いてくださる御本尊にお礼を申しましょう。先祖を守ってくれるお寺さんに御布施を封筒か半紙に包み届ける人もいます。 - 墓参りのために郷里に帰る旅は、ただの旅行とは違います。
それは、自分の心を洗う旅でもあります。私達の今のくらしを振り返り、いかに豊かに、恵まれて暮らしているかを考えましょう。仏教徒の経済は知足(ちそく)が根本です。欲望を制御することの大切さを考えましょう。 - お盆の前後によくお施餓鬼(せがき)の行事があります。縁もゆかりもない餓鬼(供養されていない霊)にほどこす功徳が、貴方のご先祖に回り向けられるのです。世間には、貧しさや病に苦しんでいる人が多数おります。そういう人達の不幸に心を馳せる布施の気持ちが大切です。
- 天台宗では布施の心を育てるためにも「一隅を照らす運動」という実践活動を進めています。家庭でこの運動に参加しましょう。詳しくはご住職におたずね下さい。
私達は平素忙しさの中に埋没していて、人としてどう生きるべきかを考えることがおろそかになっています。お盆を機会に一度振り返ってみましょう。