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法話集

命をみつめて

 この題は、中学二年生のとき骨肉腫という骨の癌で亡くなられた猿渡瞳さんの作文の題です。私は、近くのホスピス病院に患者さんのこころのケアのボランティアに行っておりますが、ある日亡くなられた患者さんの遺族の方たちのグリーフケア(悲しみのケア)の集まりで、病院の院長先生がこの『命をみつめて』という猿渡瞳さんの作文を読み上げられました。この作文が読み上げられた後、遺族の方たちを始め多くの参加者が感動の涙を流しました。その作文の中から一部抜粋して皆さんに紹介いたします。

 「みなさん、みなさんは本当の幸せって何だと思いますか。実は、幸せが私たちの一番身近にあることを、病気になったおかげで知ることができました。それは地位でも、名誉でもお金でもなく、『今、生きている』ということです。(中略)私がはっきり感じたのは、病気と闘っている人達が誰よりも一番輝いていたということです。そして、健康な体で学校に通ったり、家族や友達と当たり前のように毎日を過ごせるということが,どれ程幸せなことかということです。たとえ、どんなに困難な壁にぶつかって悩んだり、苦しんだりしたとしても、命さえあれば必ず前に進んでいけるんです。生きたくても生きれなかったたくさんの仲間が、命を懸けて教えてくれた大切なメッセージを世界中の人々に伝えていくことが私の使命だと思っています。(中略)みなさん、私達人間はいつどうなるか誰にも分からないんです。だからこそ、一日一日がとても大切なんです。病気になったおかげで生きていく上で一番大切なことを知ることができました。今では心から病気に感謝しています。私は自分の使命を果たすため、亡くなったみんなの分まで精一杯生きてまいります。みなさんも、今生きていることに感謝して悔いのない人生を送ってください」

 この猿渡瞳さんの体験の中からにじみ出た、純粋で深い言葉に多くの方々が感動しました。瞳さんは一生懸命、精一杯生きられましたが、その甲斐もなく短い生涯を終えられました。しかし、『命をみつめて』の珠玉のような真実の言葉は、今後とも私達の心の中に永遠に生き続けてまいります。


(文・九州西教区 清水寺 鍋島 隆啓)
掲載日:2019年11月01日

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