天台宗について

法話集

No.135夏休み子供坐禅会

 今年ももうすぐ本格的な夏がやって来ます。そして、夏休みになると早朝から子供たちが境内に集まって来ます。子供から大人まで誰でも気軽に訪れることができる親しみやすいお寺にしたいと考え、32年前から境内を夏休みの子供会のラジオ体操会場に提供して、私も一緒に体操をしています。

 6時30分からラジオ体操が始まります。体操が終わった後は坐禅をしたり紙芝居をしたりして子供たちとふれあいます。「坐禅をするぞ。」というと、子供たちは喜んで本堂に上がり、間隔を取って座り坐禅の準備をします。脚を組み掌を重ねて定印を結び、背筋を伸ばしてあごを引き、軽く眼を閉じて姿勢を整えます。最初の内こそ身動きしないで静かに座っていますが、やがて「カサカサ、ゴソゴソ。」と衣服の擦れる音があちこちから聞こえ始めます。頃合いを見計らって禅杖を手に静かに立ち上がります。

 子供たちは心得たもので、気配を察すると「いよいよ来るぞ。」とばかりに姿勢を一斉に正します。私は禅杖を胸前に構えて子供たちの間をゆっくりと巡った後、子供の正面に立ち禅杖を肩に軽く押し当てます。これが禅杖を打ち与える合図となります。「どうか痛くないようにお願いします。」とでも訴えるかのように、私の顔を下から見上げて「ニヤッ。」とする子供もいて、そんな時はつい私もつられて吹き出しそうになってしまいます。相対して共に合掌一礼し、子供は腕組みをして両脇腹を抱え、体を前に倒します。その両背筋に禅杖を「パシッ。パシッ。パシッ。」と3回ずつ打ち下ろします。子供たちは禅杖で打たれたら痛いだろうなという不安を抱きながらも、打たれることを楽しんでいるようにも思われます。

 子供たちには夏休みのラジオ体操や坐禅の体験が、大人になっても懐かしい思い出として心に残ってくれることを望んでいます。現にかつてラジオ体操に来ていた子供たちが、今は父親や母親となって子供と一緒に訪れ、昔を懐かしんで一緒に体操をしたり坐禅をしたりしているのです。その姿は実に微笑ましく、私にとっても大変うれしいことです。私も子供たちと同じように、もうすぐ始まる夏休みを心待ちにしています。

(文・福島教区 圓福寺 矢島寛章)
掲載日:2015年06月15日

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