天台宗について

法話集

No.119合掌の心

 二〇二〇年の五輪・パラリンピックの開催都市を決定する最終プレゼンテーションが行われ「東京」をアピールするプレゼンターを努めた女性キャスターは流暢なフランス語を駆使して立派にその任を果たし、最後は日本語で「お・も・て・な・し」と結び合掌して締め括った。その姿は優しく、美しく、そして「東京開催」を大きく引き寄せたと思います。
 合掌は南アジアなどでは日常の挨拶としていますが、その対象が本尊となれば【信心】となり、父・母ならば【孝養】となり、お互いに合掌し合えば【和合】〈穏(おだ)やかな気持ち〉となり、目上・上司・先輩に向かい合掌すれば【敬愛】〈敬(うやま)いの心、親しみの心〉を表すと言います。又、事物に向かって合掌すれば【感謝】となる。
 形は一つですが意味は色々有り、我々生きていく上には常にその意味を噛み締めたいものです。
 たとえば、相手が強い調子で言ってくると、つい負けまいと更に強く出てしまう。これでは終止がつきません。双方が相手を大事に思う心。合掌の心で接すれば話も前進を見ることでしょう。
 又、他人(ひと)から親切にされて「ありがとうございます」と素直に感謝の念を表す時の気持ち良さは、言った方も言われた方も最高ですし、周りの第三者まで明るくなります。
 仏像の中には合掌の姿をされている方がおられます。慈悲そのものを形として表しており、私たちの心に秘めている仏性に対し合掌されているのでしょうか。
 仏さまの前に純真な心で向かうことこそ合掌でしょうが、親子・兄弟・夫婦・師弟・仲間・友達・初対面の人にも合掌をする心を持ち続ける心掛けは即ち【慈悲】であり【想い遣り】です。ひいては「おもてなし」にも通ずるのではないでしょうか。 合 掌

(文・仁平昭順)
掲載日:2014年02月01日

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