天台宗について

法話集

No.124大地の恵みに感謝して

 私たちは、自らエネルギーを作ることができない為、さまざまな生命(植物や動物など)からエネルギーをもらわないと生きてはいけません。当たり前だと皆さん思うことでしょう。今一度、生命の大切さとその恵みについて考えてみましょう。
 近年は、気象庁観測以来の大雨や大風などの異常気象で各地の農作物に被害が多く見受けられますが、そんな状況下でも春には可憐な花が咲き、秋には葉を紅葉させ心を和ませてくれます。また、四季折々の果実が実り私たちを幸せな気持ちにさせてくれます。皆さんの庭や地域に、さまざまな果樹が植えてあると思いますが、その木には毎年たくさんの実が生るのではないでしょうか。皆さんは、その実を採り食べていますか。最近は、実が熟しても食べてもらえず、そのまま朽ちているのをよく目にします。何十年も昔のことですが、夏には、いちじく・桑の実・ぐみ等、秋には、柿・栗・みかん等、実が熟すのがまちきれずによく採って食べたものです。今日では、スーパーに行くと季節問わず産地より運ばれ、形も画一で店頭に並べられており、不揃いで一寸味も劣る庭の果実を労して採らなくても、何時でも安易に美味しい品物が手にはいります。その結果本来そのモノの持つ味が変わったように思います。庭の果実も食べ方次第で美味しく頂けるものです。大地の恵みに感謝して来年も実が生るように願って肥料を施し樹木を愛でるのです。
以前、中国の国清寺に訪問参拝した折に近くの果物屋に立ち寄ったときのことですが、店先の果物は日本で見るものと違い、形も不揃いで新鮮さもないように見えました。しかし、店主は丁寧に扱い品物を愛でていました。品物の産地を訪ねたところ、「自分の庭で収穫した品物だから形は整っていないがとても美味しいですよ。」と言いました。正に正論。大地の恵みに感謝しなければと教えられた気がしました。
 日本は今や経済大国と言われて久しいですが、私たちはもっとモノを大切にしなければならないと思います。日々の生活の中で「もったいない」と言う言葉を忘れかけているのではないでしょうか。「もったいない」と言う精神は先祖から受け継いでいる素晴らしい心です。経済がいくら豊かになっても心の豊かさが失われていては何もならないと思います。人々がもし本当の豊かさを求め願うなら、私たちの身の回りにある沢山の宝物があることを知る必要があります。庭の果実だけでなく、すべてのモノをもっと大切にしないといけませんね。皆さんも一度見直してみてください。

(文・植竹徳道)
掲載日:2014年07月01日

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