天台宗について

法話集

No.58『人生是好人生』

 ちょっと前になりますが、地元の中学生が体験学習でお寺に来た時のことです。朝のお勤めの後の話の中で「君たちは何歳まで生きられると思う?」と、尋ねてみました。みなさんも考えてみてください。
 子どもたちの答えは、ほとんどが「八十歳」でしたが、中には「百歳」と答えた子があってちょっと笑いが起りました。私はその時に、長いようで実際はいつ死ぬか分らないのが人生だから、目的意識をもって、自分のことだけでなく周りの人の幸せも考えながら生きて行ってくださいと話しました。
 さて今日、日本人の平均寿命は、女性は八十五歳、男性も七十八歳を超えています。百歳といっても決してめずらしい時代ではなくなりましたね。先日知り合いの百歳に近いおばあちゃんに出会う機会がありましたので、同じ質問をしてみました。すると返ってきた答えは、真顔で「百二十歳!」。同席した娘さんたちも〈といってもみんな八十近いおばあちゃんですが〉びっくりしていました。
 さて、生きるとは、寿命が長ければいいということではなく、日々の心がまえが大切だと思います。元京都大学総長で、脳医学の権威であった、平澤興先生は著書に「今日一日生きるということは、最高の医学をもってしても、充分説明できない不思議であります」と書かれ、「今日もよし、明日もよし、あさってもよし、よし、よし、よしと暮らす一日」という精神で暮らすのだと言っています。ただ、ひたすら「よし、よしと生きる」あるいは、「よし、よしと生かされている」という生き方は、日々が大きな喜びになります。
 虚堂(きどう)禅師という宋代の有名な禅僧の言葉に、『年年是好年 日日是好日』〈虚堂録〉というものがあります。禅師が元日の朝に修行僧たちに話した言葉で、「毎日が良い日でありますように」といった単純な意味ではなくて、良いことも悪いこともありのままに受け入れ、その時その時を精一杯生きなさいといった意味だそうです。
 新しい年が始まりました。『生きる』という中には、楽しいことも辛いこともたくさんありますが、どんな人生が待っていようとも『人生是好人生』として受け止めていきたいものですね。
掲載日:2008年12月15日

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