天台宗について

法話集

No.125「一隅に照やく人となれ。」 (倦まず、弛まず)

 師父の詠まれた歌『一隅にかがやけとこそ、のらすなる、祖師の、み旨に、何如にか応えん。』
 あれはもう随分昔の事。今は亡き父母から私が幼き時分によく聞かされ、また、教えられた言葉が今更ながらこの年齢になりこころに沁みるように甦って参ります。それは、私が小学生当時、家で勉強していると、近くで鳴っているテレビの言葉がどうしても耳に入り、勉強に集中できないことが度々ありました。
 すると、「あなたは、集中力がない。飽きっぽい。」と、よく父母からたしなめられたものです。当時、私が住んでいた寺の広い境内を、一年365日いつも、熱い夏の日差しの中も、また、寒風吹き荒ぶ冬の日も、一日も休むことなく丁寧に清掃のお勤めをされていた、もう80歳をとうに過ぎた老女がおられました。その方は、参詣に来られる方々からの「あー。いつ来てもこのお寺は綺麗に清掃してあって気持ちがいい。本当に綺麗にされている。」との声を励みに、信仰する本尊様の為、日々境内の清掃奉仕のお勤めをしておられました。私の父母は、その方を深く尊敬しており、あのおばあさんの様に、どんな仕事も『日々、うまず、たゆまず』努力する事の大切さを、教えていただきました。
 『うまず、たゆまず勤める』ことにより、その世界には無くてはならない存在になる。誰もが皆必ず、『一隅に照(かが)やく人になる。』と。
 あれから数十年が過ぎた今も、暑い日に清掃が行き届いている境内を見回すと、今はもうとうに亡くなったそのおばあさんの影響を受け、遺志を受け継いだ方々の手により、今もなお、境内は清掃が保たれて、参詣の方々にたいへん喜んでもらっています。

(文・吉山亮公)
掲載日:2014年08月01日

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