天台宗について

法話集

No.54通じ合う心

 仏教では「融通無碍(ゆうづうむげ)」といって、この世のすべてのものは互いに影響しあい、つながっていると教えています。ちょっと前になりますが、テレビのある番組でおもしろい実験をしていました。
 それは、飼い犬が毎日ご主人さまの帰る直前になると玄関までお出迎えするのは何故か、といったものでした。
 カメラを二台使って飼い主の男性と犬とを同時に撮影したところ、男性が会社を出て自宅へ向かう瞬間に、犬君は玄関までお出迎えするのでした。
 またある時は会社を出ても、寄り道して帰る時には迎えに出ず、寄り道先から自宅に帰ろうとした時に玄関に向かうのです。結局、男性が家に帰ろうと心に思った瞬間に、遠く離れてご主人さまを待つ犬君はそれを感じとって玄関に向かうということでした。こうしたことは、程度の差はあれ、多くの犬に報告されていることだそうです。
 私たちはどうしても目に見えるもの、形あるものがすべてと思いがちです。しかし、超能力や霊能力といったものではなくて「以心伝心」、心が通じ合うということが現実に存在するのだということは皆さんにも知っておいていただきたいものです。
 ドイツのことわざに「二人が同時にしゃべることはできないが、同時に歌うことはできる」というものがあります。二人といわずとも百人でも千人でも声を合わせれば歌うことができます。しかし、言葉が違えば同じ歌でもちょっと歌いにくいですね。ですから私は、千人が歌うこともできますが、祈ることはもっとできますよとお話ししています。
 毎年天台宗が八月四日に行なっている「世界平和祈りの集い」も、国籍や人種、宗教や宗派を超えて、みんなが世界平和実現に向けて祈るのです。
 一人ひとりの平和への祈りが、犬君と同じように、互いに通じ合うならば、全世界の人々の心が平和へ向けて動き出すことになるのだと、確信します。
掲載日:2008年08月20日

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