天台宗について

法話集

No.225こころの「ほとけ」

 他人(ひと)を笑顔にする、或いは「ありがとう」と言ってもらえる行動を取る。これは私が在家時代から心がけていることの一つです。

 では具体的にどのようなことをすれば良いのか、まずは自分自身が笑顔で毎日を過ごせるよう努めていくことが肝要です。そうは言っても世の中楽しいことばかりではなく、つらいことも多いではないか、という声もあろうかと思います。ですが、今一度考えてみてください。毎日当たり前のように過ごしている時間……。それって本当に「当たり前」ですか?

 家族と共に過ごしたり、仕事に励んだり、学業に励んだり……それぞれの持ち場で毎日一生懸命に過ごしているその一瞬一瞬が全て実は「ありがたい(有り難い)」時間なのです。残念ながら普段からそのことに気付いて生活している人は多くないかもしれません。病気になったり、災害に見舞われたりすることで、日常の当たり前が奪われ初めてそのありがたさに気付くという人が多いように思われます。そしてせっかくそのことに気付いたとしても、また時間が経つとすっかり頭から離れてしまうということも珍しくありません。これを常に心に留めている人は自然と感謝の念が生まれ、笑顔溢れる生活が送れるようになるはずです。

 そしてこの笑顔には自分だけでなく、周囲の人々を笑顔にする力があります。なぜならこの心を備えている人は、相手の立場に立って物事が考えることができ、自分の行動に移すことができるからです。それがまさに「ほとけ」の心なのです。天台宗では「一隅を照らす」という言葉をよく用いますが、このほとけの心で周囲を笑顔にしていく、ありがとうの輪を広げていく、という行動こそが「一隅を照らす」ことなのです。

 決して難しいことではありません。お子さんがいらっしゃる方は想像しやすいかと思いますが、産まれてきたばかりの赤ちゃんはどんな行動を取っても親御さんはじめ周りの人を笑顔にしてくれます。私たちは生まれながらにして皆ほとけの心を持っているのです。それが成長するにつれて様々な人々と関わり、社会との関わりを持っていく中で、自分の心をコントロールする必要に迫られ、いつしかほとけの心も仕舞い込んでしまったのかもしれません。

 ちょっと一息ついて自分の心と向き合い、大切なものを探し出してみてはいかがでしょうか?そして各々の持ち場で自分のできる役割を果たすことで、周りの大切な方々を笑顔で照らしてあげてください。仕事に励んで会社や社会に貢献することですか?おいしいご飯を家族に食べさせてあげることですか?それとも勉強を頑張って両親を喜ばせてあげることですか?あなたにできることは何でしょう?


(文・北総教区 大経院 落合 高秀)
掲載日:2023年03月01日

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