3.11 東日本大震災から10年

宗務総長 追悼のことば

天台宗宗務総長 阿部昌宏

 国難ともいうべき東日本大震災の発災から本日で10年を迎えました。地震と、それに伴って発生した大津波により1万5千人を越える方々が犠牲になられました。また現在も2500人を超える方々が行方不明になっておられます。大震災後の不自由な生活による関連死を含めますと、犠牲者はさらに数を増します。亡くなられた方々に心より哀悼の意を表します。

 また、現在も避難生活を続けられている方は4万7千人にも上り、特に福島第一原子力発電所の放射能漏洩事故により、福島県浜通りを中心とした県民の皆さまは今も避難を余儀なくされ、故郷に戻れない状況が続いております。改めてお見舞いを申し上げます。

 天台宗では、発災後に第256世天台座主半田孝淳猊下が被災された全ての方に呼びかけられた「皆さまはひとりではない」との”お言葉”を体現すべく、被災地や被災者の皆さまに寄り添う活動を展開してまいりました。10年前、私も震災直後に被災地へ入りました。原型をとどめぬ茫漠たる現地に立ったとき、天災とはいえあまりの酷さに涙を堪えることが出来なかったのを覚えております。宗教者として何ができるのかを自らに問いかけ続けました。

 政府が進める「復興・創生期間」は令和3年から第二期に入り、被災者支援をはじめとする事業への取り組みが始まります。被災各地の住宅や交通機関などの整備が進みハード面での復興は進みました。しかし、被災者の生活などソフト面は今なお途上にあります。中でも原発被害に遭われた福島県浜通りの双葉郡6町2村には、帰還困難な住民の方々がまだ多くおられます。双葉町では全町民が今も避難を余儀なくされているのが現状です。以前、双葉町の関係者に話を聞いたとき「私たちは前例がないことに立ち向かってきました。そして10年を迎えますが、今も正解がない中で復興に関わっています」と打ち明けられました。そして「福島と繋がっていたいという方々から元気をもらっているのです」と述べられていました。今も復興に向け希望をもって懸命に努力されている被災地の皆さまにとり、我々が寄り添い続けることが励みになることを知りました。

 天台宗といたしましては、伝教大師最澄様がお示しになられた「己を忘れて他を利する」の精神で、震災を風化させず、被災地の皆さまの心をケアできるような新たな支援策を検討してまいりたく存じます。

 被災地の皆さまの生活が一日も早く平穏なものに戻り、また復興が成し遂げられますよう心よりお祈り申し上げます。

合 掌

天台宗宗務総長 阿部昌宏

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