天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第214号

天台宗全国一斉托鉢を実施

 「師走の風物詩 」として知られる天台宗の全国一斉托鉢が12月1日に実施された。「宗祖伝教大師の御精神を現代に生かそう」と、昭和61年に始められてから今年で35回を数える。この日を含め、全国各地で行われる托鉢に寄せられた浄財は、一隅を照らす運動総本部の地球救援事務局などを通じて、国内外の福祉活動への支援に充てられる。

 全国一斉托鉢は、昭和61年(1986)に、故山田惠諦天台座主猊下が自ら先頭にたって浄財勧募に当たられたことに始まる。平成9年(1997)からは12月を「地球救援活動強化月間」、1日を全国一斉托鉢の日とし、一隅を照らす運動の各教区本部、全国の各寺院単位で実施されている。

 同日の大津市坂本界隈で実施された托鉢行脚には、森川宏映天台座主猊下はじめ、水尾寂芳延暦寺執行、比叡山延暦寺の僧侶や職員、また延暦寺一山住職らが参加。宗祖伝教大師ご誕生の地、生源寺で森川座主猊下の導師で法楽を営んだ。

 水尾延暦寺執行は「声は通常より下げても、新型コロナウイルス感染症の早期収束への祈りの気持ちを込めてしっかりと勤めたい」と述べ、森川座主猊下を先頭に出発。里道にある家々の戸口で読経して廻られ、浄財の寄進を受けられた。

 なお今回は、手指の消毒や密を避けた新型コロナウイルス感染症への感染対策を十分に講じながら戸別托鉢のみ実施した。天台宗務庁職員が担当する周辺主要駅での街頭托鉢は中止された。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

正月君 飛べない時はゆっくり休めばいいじゃん
仕方ないよ 飛べないんだからさ 

さくらももこ

 「どうせ飛べないんなら心配するより休んだ方がいいよ」

 『ちびまる子ちゃん』で知られるさくらももこが描いた『COJI-COJI』という漫画をご存知でしょうか。20年以上前に出版された作品で、読んだことがある方もおられるかと思います。主人公のコジコジとその仲間たちの日常が描かれています。

 コジコジの仲間の中に、幸せな正月を運んでくれる「正月君」という精霊がいます。彼が訪れなかった年は暗い新年になると言われているのですが、「正月は面倒なことが多い」という言葉を聞いてから飛べなくなり、正月に出てこられない事態に陥ります。仲間と共に試行錯誤を繰り返し、飛べるように努力しますが事態は一向に変わりません。そんな光景を見たコジコジが発した一言が、今回の言葉です。

 生きていれば、大なり小なり行き詰まることがあるでしょう。未知なる問題にどう立ち向かえばいいのか、また正月君のように今まで当たり前だった事が突然無くなることもあります。この世は移ろい変わっていくものですから。

 そういった時に、問題解決に努める事は非常に重要です。しかし、そこで視野が狭まってしまうのはかえって逆効果ではないでしょうか。物語では、コジコジの言葉を受けた正月君は休むと決めた瞬間、体を宙に浮かすことが出来ました。そのまま本当に休む事はなく、初日の出までに皆に幸せな正月を届けようと奔走します。
 少しの心の余裕が問題解決への足がかりになるのだと、コジコジが教えてくれたような気がします。

 「年が明けるっていうのはけっこう大変なイベントなのさ」
 「へー 大変なおべんとうなのか」
 一つの考えに懲りかたまらずに、肩の力を抜いて新たな年を過ごしたいものです。

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