天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第205号

令和元年台風15号・19号風水害被災地を支援
-各自治体に義援金を寄託-

 令和元年の台風15号・19号の風水害による被災地を支援するための義援金を募っていた天台宗では、3月より被災した自治体に義援金の寄託を始めた。先月16日には寺本亮洞総務部長、小森文道延暦寺副執行、木本清玄埼玉教区宗務所長が埼玉県庁を訪問し、300万円を飯島寛副知事に手渡した。

-福島、宮城、長野、千葉、茨城、栃木、静岡の各県にも-

 昨年9月に発生した台風15号・19号により全国各地で甚大な被害が発生したことを受け、天台宗では10月17日付けで「令和元年台風15号・19号風水害天台宗災害対策本部」(本部長・杜多道雄宗務総長)を設置。天台宗と延暦寺内局で構成され、副本部長に小堀光實延暦寺執行、事務局長に寺本総務部長が就任し、被災寺院および各被災地の視察とお見舞いを行ってきた。

 その他、被災寺院への見舞金や檀信徒へのお見舞い、ボランティア活動を行う団体への支援を表明し、同時に義援金募金のお願いを全教区寺院に呼びかけていた。
 義援金は、2月末までに約2400万円が寄せられ、埼玉県の他、福島県(500万円)、宮城県(300万円)、長野県(200万円)、千葉県(200万円)の各県庁を訪問、茨城県、栃木県、静岡県に100万円ずつ送付し計1800万円を寄託した。
 埼玉県庁で飯島副知事と面会した寺本総務部長は、床上床下浸水などの被害にあった埼玉教区内寺院を視察した結果を報告。飯島副知事からは、県内の被害状況を聞いた。

 飯島副知事は「今なお仮設住宅で生活されておられる被災者の方々が多くおられます。お気持ちをいただけるのは大変ありがたく、大切に使わせていただきます」と感謝を述べた。

 台風15号による被害では、 神奈川、東京、北総、南総、 埼玉、茨城の6教区で、墓石の破損、本堂の瓦・外壁破損、 雨漏り、庫裡、山門の破損、 倒木などの被害が出ている。
 南総では崖崩れや浸水などの被害も。
 また、その後に襲来した19号でも滋賀、信越、東京、栃木、福島の各教区で被害が出ていた。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人みなうつくしき

与謝野 晶子

 「春」といえば何を連想しますか。
 別れの季節、出会いの季節と言われますね。環境が新しくなった人もいるかもしれません。また、草木が芽吹く時期です。今年東京では観測史上最も早く桜の開花宣言が出されました。

 今回の言葉は『みだれ髪』(初版)に収められているものです。京都の清水を目指して祇園を通ると、桜月夜だけでなく行き交う人も皆美しく見えるという作者の心躍る様子が伝わってきます。与謝野晶子が桜月夜を美しく思えたのは別の要因が隠れているようですが、人々は古今を問わず花々の美しさに魅了され、愛でてきました。
 外出が制限されている昨今ですが、あるホテルでは室内で食事を楽しみながら桜を見られるプランが人気を博していると聞きます。遡ると和歌の作品の中にも散る桜を惜しむものや、願うことなら桜の下で死にたいといった内容のものまで残されています。

 美しいものを見ることによって、脳に良い効果をもたらすことが分かっています。「眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)」という部分が刺激されるとか。その部分は「他人のこころ(感情)の理解、社会性、モラルなどに深く関係」しており、逆に損傷を受けるとモラルや判断力の低下、感情が抑えられない等の影響が出るのだそうです。また、眼窩前頭皮質を含む前頭前皮質が大きいほどストレス耐性があり、不安になる回数が少ないとの報告もあります。植物を観賞するだけではなく音楽を聴く、おいしいものを食べるという行為でも活性化に繋がります。つまり美しいものに接することで、心まで美しくなれるのです。

 今日、得体の知れぬ脅威によって混乱が生じています。そんな社会に身を置いていては心が安まらない人もいるでしょう。まずは心を整える為にも美しいものを探してみてはいかがでしょうか。目に映るものがすべて美しく思える、春の陽気のように麗らかな心持ちでいられるように。

鬼手仏心

「認定こども園」に

 四月は入学、入園シーズンです。
 今年は新型コロナウイルス問題で騒然としていますが、わが幼稚園も新しい園児を迎えることになります。
 毎年の事ながら、不安でいっぱいの子どもたちの顔を見ると、迎える私たちも一日も早く慣れてほしいという思いで、いくらか緊張の日々を過ごします。でも、先輩にあたる園児たちが、一所懸命に新入園児の世話をし、新しい環境に慣れさせようとする姿に、ホッと安心するのです。

 さて、このたび制度が変わり、それに則り、我が園も今年の9月から「幼稚園」から「認定こども園」になる予定です。施設もそのために増築中です。
 認定こども園とは、簡単に言うと、幼児教育・保育を一体的に行う施設です。幼稚園と保育所の両方のよさを併せもっている、都道府県から認可された施設のことをいいます。

 ですから、我が園も現在は3歳児から5歳児が対象ですが、それに0歳児から2歳児が加わることになるのです。9月に備え、資格を持った新卒の先生も多く採用しなければなりませんし、いろいろと準備が必要で、頭を悩ませているところです。

 ですが、楽しみもあります。生まれて間もないお子さんから、就学直前の5歳児までの幼い子どもたちを一貫して育てる楽しみです。仏の教えを基に、人間の土台を作る幼児期教育に携わることのできる楽しみです。
 子ども達といるとき、大人となって忘れ去っていた気持ちや感覚にハッと気づかされることがあります。私たちも教わることも多くあるのです。
 それぞれ違った個性を持つ子どもたちが育っていく一番大切な時期。その時を共に過ごすことは、私にとって大きな喜びになっています。 

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