天台宗について

法話集

No.183日常の五心

 私たちはだれでも、この世に生を受けた瞬間から、数とともに一生を過ごします。誕生日、何時何分、生年月日、お金、元号、西暦などなど枚挙にいとまがありません。学校に入って間もなく算数の授業があっていよいよ本格的に数の世界を体験・探検していきます。その後それこそ数限りないほど毎日格闘せんばかりにつきあうことになります。自分のラッキーナンバーを持つ人もいるでしょう。あるいは逆に嫌いな数字の日は、朝から晩まで慎重に、緊張して過ごす人もいることでしょう。

 過去、現在、未来を三界といったり、五節供、七不思議、十干十二支、二十四節季、百八煩悩などといえば数字の分だけ中身があってそのまとまりを表しています。これらは名数と言います。仏教の世界の名数は,特に法数とよばれ、それぞれの宗派で特徴はあるものの、1から8万4千までの項に分類されているとのことです。

 五の数字に着目してみると、宇宙の成り立ち「地、水、火、風、空」は五大と呼ばれます。地球には五大陸があります。オリンピックが5つの輪を組み合わせてマークを作り、ロス五輪とか東京五輪と呼ばれるのはここからきています。人の体は五臓六腑から成り立ちます。般若心経の中で何度か繰り返されますが、眼(色)・耳(声)・鼻(香)・舌(味)・身(触)は五感(五欲)と呼ばれる私たち人間の大切な感覚要素です。眼には天眼、肉眼、法眼、慈眼、仏眼の五眼があり、声または音にも五声、五音があって、仏教音楽といわれる声明(しょうみょう)の音階を構成します。五音だけだと半音が含まれていません。それをヒントにピアノやオルガンの黒鍵をなぞっただけで、「は~るばる来たぜ は~こだてへ~」などと演歌や民謡の多くがいともたやすく伴奏ができます。舌(味)には塩味、苦味、うま味、酸味、甘味の五味がかかせません。両手両足の指の数も5本ずつで親指、人指指、中指、薬指、小指です。そういえば三角形の五心として内心、外心、重心、垂心、傍心も学校で勉強しました。

 最後は、「日常の五心」という常日頃からの心がけです。「はい」という素直な心。「すみません」という反省の心。「おかげさま」という謙虚な心。「私がします」という奉仕の心。「ありがとう」という感謝の心。

 令和の世に入り、穏やかで和やかな、未来に希望のある生活を送ってまいりましょう。


(文・陸奥教区 松本坊 坊城 延溟)
掲載日:2019年06月01日

その他のおすすめ法話

ページの先頭へ戻る