天台宗について

法話集

No.130最澄さまの願い

 明けましておめでとうございます。健やかに新年をお迎えになられたことと、お慶び申し上げます。
 天台宗の総本山「比叡山延暦寺」の総本堂は、薬師如来さまを本尊とする根本中堂です。
 根本中堂は、天台造りと呼ばれ、外陣・中陣・内陣に分かれております。内陣は外陣・中陣よりも3メートルほど低い石敷きの土間となっており、内陣中央の本尊さまが立っておられる床と、お参りする中陣・外陣の床が同じ高さになっています。

 この根本中堂は、最澄さまのご精神を不滅の法灯とともに形に表されております。
 内陣の深い谷は、お釈迦さまが悟られた「人間の一生は、決して楽しく喜ぶべきものでなく、むしろ思い通りにならない苦悩の深い世界」が表されています。
 思い通りにならない苦悩は、いくらあっても満足できない欲深さ、満足が得られない怒りや憎しみ、満足できないことをいつまでも嘆くこと。また、老い、病み、死ぬという人間存在の根元的な苦しみなどです。

 お薬師さまの床と外陣・中陣の床が同じ高さは、人間に限らず命あるものは、仏の子であり、仏になる性質、仏の道を求める心をもっており、本尊さまが常に一緒に苦楽をともにしながら、思い通りにならない苦悩を覚悟しなければならないことを表しています。
 思い通りにならない苦悩は「煩悩」、覚悟は「さとること」です。
 内陣では、1年365日、僧侶が日本国の安泰、世界平和とともに、人間の煩悩(護摩木)を火の中に投げ入れて煩悩を焼き消し、さとることができるように、すなわち仏心を起こし、仏の道を求める人になれるよう祈っています。
 そして最澄さまは、信仰のよりどころとなることを願い、さとりの灯火として、いついつまでも仏の道を求める心(道心)を持って、一隅を照らすことができる人材を育てたいと不滅の法灯を、内陣に灯されました。

 この最澄さまの願いである「仏の道を求める心」「一隅を照らす心」を大きく育み、磨き光らせ、日々実践し、幸せな生活を送ってください。
 皆様のご多幸とご健勝を心よりお祈り申し上げます。

(文 ・ 勝山圓昭)
掲載日:2015年01月01日

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