阿弥陀様を中心にして、多勢の菩薩様たちが雲に乗って降りてくる有様を描いた絵であります。これを「聖(しょう)衆(じゅう)来迎図(らいごうず)」または「来迎図」とも申します。
絵の右下に人が臥していますが、これは臨終の時に阿弥陀様が多勢の菩薩様を引き連れて迎えに来て下さる有様を描いたものです。
彼の国に生ずる時、この人、精神勇猛なるが故に、阿弥陀如来は観音(かんのん)、勢至(せいし)、無数の化佛(けぶつ)、百千の比丘声聞大衆、無量の諸天、七宝の宮殿と共に行者の前に至る。
阿弥陀佛は大光明を放って行者の身を照らし、諸々の菩薩と共に手を授けて迎接し、観音、勢至は無数の菩薩と共に行者を讃歎し、その心を勧進す、聖衆来迎図、には、阿弥陀(あみだ)三尊(さんぞん)来迎図(らいごうず)、弥陀(みだ)一尊(いっそん)来迎図(らいごうず)、山越(やまごえ)来迎図(らいごうず)、還(かん)来迎図(らいごうず)等種々ありますが来迎図の多くは、阿弥陀佛の他二十五菩薩が共に白雲に乗って迎えに来る図の様です。二十五菩薩を記しておこう。
一、観世音(かんぜおん)菩薩 二、大勢至(だいせいし)菩薩 三、薬(やく)王(おう)菩薩 四、薬上(やくしょう)菩薩 五、普賢(ふげん)菩薩 六、法(ほう)自在(じざい)王(おう)菩薩 七、獅子吼(ししく)菩薩 八、陀羅尼(だらに)菩薩 九、虚空蔵(こくうぞう)菩薩 十、徳蔵(とくぞう)菩薩 十一、宝蔵(ほうぞう)菩薩 十二、金蔵(こんぞう)菩薩 十三、金剛蔵(こんごうぞう)菩薩 十四、光明(こうみょう)王(おう)菩薩 十五、山海(さんかい)慧(え)菩薩 十六、華厳(けごん)王(おう)菩薩 十七、衆(しゅう)宝(ほう)王(おう)菩薩 十八、月光(がっこう)王(おう)菩薩 十九、日照(にっしょう)王(おう)菩薩 二十、三昧(さんまい)王(おう)菩薩 二十一、定自在(じょうじざい)王(おう)菩薩 二十二、大自在(だいじざい)王(おう)菩薩 二十三、白(びゃく)象(ぞう)王(おう)菩薩 二十四、大威徳(だいいとく)王(おう)菩薩 二十五、無辺(むへん)身(しん)菩薩
二十五菩薩の来迎図は、藤原時代末に盛んに描かれたのですが、当時の人にとってこの世は末法時代に入り終末の様相を呈し、この世への厭世観から来世の極楽浄土に対して強い憧れが生まれております。
(文・荻原観順)