天台宗について

法話集

No.64施餓鬼会(せがきえ)

 東京では七月、盂蘭盆を行い、その前後に「施餓鬼会」を行いますが、「施餓鬼会」というのは、餓鬼〈弔う者のない無縁の亡者〉のためにいろいろな種類の飲食を施す法会で、「施食会」ともいいます。
 本来「施餓鬼会」というのは、別に期日を定めずに随時行う法会でありますが、いつの頃からか盂蘭盆会と同じように考えるようになり、東京方面では七月のお盆の頃、他の多くの地域では八月のお盆の頃に行います。
 施餓鬼会の起源については、インドでお釈迦様が説法している時、十大弟子の一人に「阿難(あなん)」というお方がおられました。この方が、ある晩、静かな所で修行をしていますと一人の餓鬼が現れました。その姿は醜く、痩せていて、口からは火を吐き、喉は針のように細く、腹は異常に脹れていて、髪の毛は乱れ、爪は鋭く、それはそれは恐ろしい形相をしていました。そして、食べ物を食べようとして口へ運びます。そうすると食物は火となって食べることが出来ず、絶えず苦しんでいます。その餓鬼が来て、
 「お前は三日以内に死んで餓鬼道に墜ちるだろう。」
といったのです。それを聞いた阿難は大変に驚き、早速お釈迦様にそのことについて相談いたしました。
 するとお釈迦様は、
 「十万の僧を供養せよ。」
とのお教えでした。阿難は多くの僧侶を集め供養しました。三日以内に死ぬといわれた阿難は、その供養の功徳により長寿を得ることができたといいます。このように、阿難が供養したことから始まった法要と言われております。
 その作法などは宗派によって、或は地域によって多生異なりますが、一般には道場の外側の方に供養壇、即ち施餓鬼壇を設け、五色の幡(はた)にそれぞれ如来の名前を書き、この壇の回りに懸け、壇上には「三界万霊」と書いた大きな位牌を安置し、食べ物やお水をお供えするのであります。
 また、水死した人のために、川の中に船を浮かべ、或は水辺で施餓鬼法を修し、お供え物を流したり、紙で作った小舟を流したり、船形の灯篭を流したりして、水死した人ばかりでなく、その年に亡くなられた方々の霊、或は三界万霊に供養を営む寺院などもあります。
 始め、延命・長寿の法要であったものが、何時しかお盆と一緒に行うようになりました。
掲載日:2009年06月24日

その他のおすすめ法話

ページの先頭へ戻る