天台宗について

法話集

No.227マスクをしていても

新型コロナウウイルスが世界中に猛威を振るい始めてから約3年半が経ちました。日本では、5月8日から新型コロナウイルスの感染法上の分類が「5類」に引き下げられることが決定いたしました。その日から、生活様式が大きく変わることを期待している方も多いのではないかと思います。

ただどうでしょうか、日本人の性格上、5月8日からいきなりマスクを外して生活できるようになるかと思うと、なかなかそうはいかない気もします。

私は、マスク生活になって改めて「表情は大事だな」と思うようになりました。そのきっかけは、年始参りに来られた方の様子を見ていた時に感じた違和感でした。その違和感について考えてみたところ、原因は「皆マスクをしているから表情が分かりづらく、気持ちよくお参りをしてもらえているか分からない」ということだと気づいたのです。それ以来、多くの方の前で次のような話をさせていただいてきました。

仏教には「無財の七施」という教えがあります。お金や物がなくても、誰にでもできる7つの施しについて説かれています。施しとは、他者にしてさしあげられることです。7つの内の1つに「和顔施」というものがあります。和やかな顔を施す。皆さんは、家族やクラスメイト、職場の仲間が、暗い顔をしていたらどう感じますか?居心地が悪いと感じてしまいませんか?逆にニコニコしていたら、何があるわけでもないのに幸せな気分になりませんか?和やかな顔でいることが他者への施しになる、これが和顔施です。

ただ、まだしばらく続きそうなマスク生活。私たちは顔の半分以上をマスクで隠してしまっています。口元が笑っていても、相手には笑っているようには見えないかもしれません。人に見せられるのは目元だけです。そこで皆さんに知っていただきたいのが、7つの内のもう一つ「眼施」です。優しい眼差し施す。「目は口ほどに物を言う」ということわざもあるように、日本では「目」というものを非常に重要視してきました。優しい眼差しを相手に向けることもまた、他者への施しになるのです。

出かける準備をしてマスクをしたら、家を出る前に洗面台の前に立ち寄って、目元をどう動かしたら優しく見えるか、ぜひご自身で確かめてみてください。マスクをしていても、人に優しい眼差しを向けられるように、意識しながら毎日を過ごしていただきたいと思います。それが、人のためになっているということを覚えておいてほしいのです。

皆が素顔で笑いあえる日が、1日も早く来ることを願うばかりです。


(文・埼玉教区 安楽寺 櫛笥 亮諦)
掲載日:2023年05月01日

その他のおすすめ法話

ページの先頭へ戻る