コロナ禍中、そこ彼処で耳にする「ソーシャルディスタンス」
日本語では「社会的距離」というらしい。
これまでも社交術として敢えて他人との「お付き合いのソーシャルディスタンス」を保ってきた方は多くいらっしゃることでしょうが、コロナ禍中ではそれに加え他人と数メートル離れて生活する「物理的ソーシャルディスタンス」も求められるようになってしまったのです。
今までになかったこの難しい状況の中。今後、私たちはどのように生活してゆけば良いのでしょうか。
そこで、昔から物理的ソーシャルディスタンスを求められている二つの世界を見ていくことにしましょう。
その世界とは、地獄と極楽です。
まず初めは地獄から
地獄はちょうど食事時。
驚くことに豪華な食事がテーブル一杯に並んでいます。
しかし、こんなに豪勢な食事が食べられるのに地獄の人々は皆ガリガリに痩せ細っています。何故だろうとよく見てみると手には3尺3寸(約1メートル)の箸が握られているのでした。空腹の彼らはご馳走を食べようと必死ですが、この長い箸のためにうまく食べられません。しまいには食べられない事に苛立ち、隣同士で喧嘩も始まっています。
結局、彼らは何一つ口には出来ずに食事の時間は終わってしまったのでした。
さて、お次は極楽を見てみましょう。
極楽もちょうど食事時。
さすがは極楽、豪華な食事がテーブル一杯に並んでいます。
驚いた事に極楽の人々の手にも地獄と同じ3尺3寸の箸が握られています。でも、ここの住人たちは皆楽しそうに食事をしています。何故だろうとよく見ていると長い箸で取った料理を自分の向こう側の人に食べさせています。お返しにと向かい側の人からは好きな料理を口に入れてもらっているのです。
和やかな雰囲気で食事は進み、皆が満腹になったところで食事の時間は終わりました。
さて、どうでしょう。
ご覧の様に地獄でも極楽でも同じ3尺3寸の物理的ソーシャルディスタンスを保たなければならないのですが、この二つの国の姿は全く違うのです。
「ウィズコロナ」
コロナウイルスと共に生活するためのソーシャルディスタンスを求められるようになったいま、この二つの世界を参考に生活を見直していかなければなりません。
もちろん、極楽世界のような幸せな生活を求めて。
※2020年7月現在。世界保健機関(WHO)ではここでいう「物理的ソーシャルディスタンス」を「フィジカルディスタンシング(身体的距離の確保)」と言い方を改めています。
(文・東京教区 知行院 山田 昌秀)