天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第253号

能登半島地震 支援活動拠点を設置へ

 令和6年能登半島地震への災害義援金を受け付けていた一隅を照らす運動総本部「地球救援事務局」は3月25日付けで締め切り、総額5621万1216円の善意が寄せられた。

 また天台宗災害対策本部会議が3月14日に開かれ、被災地入りした北陸教区の光照良浩宗務所長や天台宗防災士協議会から報告を受け、翠雲寺がある珠洲市で市民や檀信徒らへの傾聴などの支援活動を行う方針が示された。

 天台宗では、地震発生直後の1月9日に天台宗災害対策本部を立ち上げ、一隅を照らす運動総本部「地球救援事務局」(竹内純照総本部長)を窓口とし、災害義援金を呼びかけていた。

 3月25日までの期限としていたが、被害の大きさからも緊急を要すると判断、2月16日付けで2月9日までに寄せられた4000万円を各自治体や日本赤十字社などにそれぞれ寄託した。

 寄託先は、石川県に300
0万円、新潟県には600万円、富山県と福井県は日本赤十字社や共同募金会に送金した。また医療活動を続ける岡山市に本部を置く特定非営利活動法人AMDA(アムダ)に、緊急救援引当金より支援金300万円を送った。

 一隅を照らす運動総本部では、残りの1600万円についても全国から寄せられた善意を早急に関係機関に届ける予定だ。なお緊急救援募金は終了させたが、引き続き能登半島地震への指定寄付金として受け付ける。

 問い合わせは、一隅を照らす運動総本部「地球救援事務局」。電話077−579−0022。またはホームページをご参照ください。

- 長期的支援が必要 -

 天台宗災害対策本部(本部長・阿部昌宏宗務総長)は、3月14日に会議を開き、珠洲市翠雲寺をボランティアなどの活動拠点とする方針などを決めた。
 
 金沢市藥王寺(青木大樹住職)での開催に続き2回目。天台宗と延暦寺の両役員、北陸教区の光照宗務所長、同教区宗議会議員の岩尾尚照翠雲寺住職、天台宗防災士協議会、天台仏教青年連盟救援委員会らが出席した。

 翠雲寺がある珠洲市寺家地区は、地震と津波の二重被害を受け、檀信徒や住民らは避難生活を余儀なくされていた。

 岩尾住職の報告では、寺家地区の被災者らは避難所から仮設住宅に入居し、ようやく落ち着いた生活を取り戻しつつあるという。そして「大きい避難所では、精神的にも疲れ切っていた。仮設住宅に移ることだけが希望だった」と語った。

 一方、ボランティア活動を予定する天台宗防災士協議会は2月8日に珠洲市に入り、被害を受けた地域や社会福祉協議会などを視察。また光照宗務所長ら北陸教区災害対策本部も3月7日に珠洲市ボランティアセンターを訪問して必要な援助について聞いた。

 これらの報告を受け、翠雲寺境内に道具等を保管できるプレハブ小屋を設置して支援活動の拠点とすることを検討。東日本大震災での経験を活かした傾聴活動や、長期的な支援が必要であることを確認した。

- 被災者の心の救済へ -

 信越教区の善光寺大勧進(栢木寛照貫主)は、3月25日に能登半島地震義援金托鉢を境内で行った。(7面に関連記事)

 浅間山大噴火で被災者を救った第80世住職の等順大僧正の命日「等順忌」に合わせて実施。善光寺天台宗一山住職らと共に募金を呼びかけた栢木貫主は「物心両面で被災者に寄り添われた等順大僧正の意志を継ぐことが我々の使命。自然災害の被災地へ想いを深め、被災された方々の心の救済にあたっていきたい」と話している。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

 人間が他の生き物と違うのは、お腹がいっぱいになるだけでは満たされないということです。

 絵とは遠い昔から、人間の想像力が生み出した、頭のための〝ごはん〟なのです。
 命へのはげましなのです。

【NHK】あおきいろ「おしえて!せんせい」 ヤマザキマリ編『なぜ人間は絵を描くの?』

 毎年どんな美術展が行われるかを楽しみにして、調べています。

 不思議なもので、個人的には、冬の間よりも暖かくなってきた春以降の方が各地の美術展や博物展に行きたい欲求が強くなります。心も体も浮き立ってくるからでしょうか。「良い作品を見たい、出会いたい」という意欲が高まってくるようです。

 昨今は、高い入館料を払わなくても見ることのできる小さな展示にも出向き、自分だけのとっておきを見つける楽しみも見つけました。

 こういう時、人間には「頭=心」のための「ごはん=栄養」が必要であるということに気づかされます。

 人は、まずは衣食住が満たされなければ生きてはいけません。日本ではまだまだ困難な状況に置かれている方がたくさんおられます。その方々を社会全体で支えていくことは、日本国民としての使命だと思います。

 その上で、人として満たされること、「頭のための〝ごはん〟」が必要となります。「頭のための〝ごはん〟」は絵や音楽、スポーツであったりと、その人によって「心地いい」「気持ちがはずむ」などと感じるものでしょう。

 数年前に滋賀県大津市の聖衆来迎寺にある『六道絵』を博物館で拝見する機会がありました。この『六道絵』は国宝で、恵心僧都の記された『往生要集』に基づいて描かれた全15幅の鎌倉時代の傑作です。

 その中でも地獄を描いた4幅は、凄惨な描写が圧巻で、地獄の恐ろしさが心に刻みつけられるような、迫力のある作品でした。強い印象を受ける絵に出会えたことは実にありがたいことでした。

 このような出会いがあるからこそ、頭の“ごはん”を摂(と)りに美術展にせっせと足を運びたくなるのです。

鬼手仏心

格差のもたらすもの

 少子化問題がクローズアップされてから、政府の方針や、それに絡んでの意見がいろいろ出されていましたが、これだ、という有望な対策案はないようです。

 どうやら行政の舞台でも、経済的支援の財源をどうするかで悩ましい状態になっているようです。待ったなしの課題なので、対策がスムーズに実現に向かうのか心配です。

 少子化の世の中、現実の子どもたちの世界では、いろいろ問題が起きています。特に経済格差の問題は大きいものがあります。経済的に恵まれない家庭では、食事に事欠くことも多いのです。そのような家庭の子どもに食事を提供する「子ども食堂」が全国にできているようです。でも、その支援を受けられるのは、ごく一部でしょうか。

 報道で知ったのですが、学校が長期休みとなる期間は、特に心配になるようです。学期中は、給食があるので、確実に栄養のある一食は摂れますが、休み中はそれができません。極端なようですが、一玉や二玉のうどんを家族で分け合ったり、一食分を水で我慢したりする例もあるということです。

 本来は、行政がなんとか支援すべき問題と思いますが、ことは生命に関わる問題ですので一刻の猶予もないのです。そこで、社会のいろいろな人たちが救いの手を差し伸べているのが現状です。

 「共に生きる」社会である以上、放っておいてはならないことでしょう。この問題に限らず、この社会に生きる弱い立場の人々のことを、常に自らの問題として考えることが私たちに求められていると思います。

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