天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第229号

ウクライナ侵攻を非難する決議文採択【第百五十一回通常宗議会】

 第百五十一回通常宗議会が3月8日から10日まで開催され、令和4年度通常会計予算11億1200万円を含む議案17件、報告3件を可決決定し、全日程を終えた。最終日の10日には、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を非難する決議文が採択された。

 今宗議会は、4月15日に任期満了を控えた現職議員にとり最後の宗議会。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月開催へ延期していた。

 開会式では、大樹孝啓天台座主猊下の導師で法楽を奉修。続けての〝お言葉”で「コロナ禍に加え、世界では国益を優先させた暴力を含む強圧的行為が広がっており、人びとの不安を増幅させています。今夏には、比叡山宗教サミット35周年を迎えます。諸宗教の方々と平和の祈りを捧げ、比叡山延暦寺より世界に敷衍してまいりたく存じます」と述べられた。

 新年度予算関係では、第二百五十八世天台座主傳燈相承式に関する臨時収納金として歳入歳出ともに4930万円を計上。法人寺院より1個数10円、非法人寺院一律1000円の協力を願い、令和5年3月31日までの特別会計を組んで対応する。

 令和4年度の通常会計の総予算は歳入歳出ともに11億1200万円とし、前年度補正前予算額より2178万円減額。社会情勢を鑑みて節約し、最小限の増額に留めている。新たに比叡山宗教サミット35周年記念式典助成金を盛り込んだ。

 サミット35周年について阿部宗務総長は、気候変動、環境問題をメインテーマに取り上げることを明らかにした。8月4日に、京都国際会館と比叡山延暦寺で開催する予定で準備を始める。

 宗規関係議案では、天台宗務庁の職員定員を業務内容にあわせた「37人」から「35人」へと変更した。
宗機顧問の補欠推薦があり、滋賀教区長壽寺住職の長山慈信大僧正の就任を同意した。最後に東日本大震災物故者を悼み全員で黙祷を捧げた。

「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対する決議文」はこちらからご覧ください。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

いつも年齢はただの数字だと信じている。
私たちの能力、可能性、偉業を
定義するものじゃない

ジェニファー・ジョーンズ(北京オリンピック・カナダ代表のカーリング選手)

 世界情勢がここ数十年でかつてないほどの不穏ななかで、冬の北京オリンピックが今年開催されました。政治的なオリンピックだと鼻白んだ人も多かったかもしれません。

 しかしそのような状況下でも、アスリートたちの活躍は素晴らしいものでした。人間の躍動の力強さ、美しさはいつ見ても感動するものです。またその言動からも、人として大きな器を感じる選手のなんと多いことでしょう。

 今回のオリンピックで、カナダ代表最高齢女子アスリートのジェニファー・ジョーンズは47歳でした。ソチオリンピックで金メダル、世界大会では2度の優勝を果たしたカーリング女子のレジェンドとして、カーリング女子日本代表選手たちのあこがれの存在です。残念ながらカナダは予選で日本と同じ5勝4敗ながら、敗退してしまいました。そのことが決まった時、ジョーンズ選手は日本代表の藤澤五月選手と吉田知那美選手の元に歩み寄り抱きしめて祝福しました。悔しい思いが強く心を占めるだろうと誰もが想像できるのに、その場で相手の健闘を称え、笑顔で送り出すジョーンズ選手の潔さ、寛大さ、温かさに胸が熱くなりました。

 そんな彼女の言葉「年齢はただの数字」のなんとかっこいいことか。日本語には「年を考えなさい」「いい年して」といった年齢に否定的な言葉もあります。しかし、現在はまさしく「エージレス(年齢にこだわらないこと)」の時代。古い表現は過去のものとして、年齢を気にせずにやりたいことに挑戦してもいいのではないでしょうか。年長者は若者の手本であれ、と言いますが、そういう年長者の行動こそが若者に将来の可能性を示してあげることができるのではないかと思うのです。
もちろんその行動とは、社会的にも倫理的にも認められるようなものであることは言うまでもありません。人々を傷つけ困らせる年を取った暴君ほど、見苦しいものはありませんから。

鬼手仏心

十の姿

 春になると、秋に山奥へ帰っていた草木の精霊(せいれい)たちが春風に乗って一斉に野山の木々や草花に宿り、芽を出し花を咲かせ始めます。
春はまた、子どもたちも新芽を出すように幼稚園や小・中学校へ入学や進級をして新たな挑戦を始めます。
幼児期が終わるまでに育んでほしい「十の姿」があります。

 「健康な心と体」「自立心」「協調性」「道徳性・規範意識の芽生え」「社会生活との関わり」「思考力の芽生え」「自然との関わり・生命尊重」「数量や図形、標識や文字などへの関心」「言葉による伝え合い」「豊かな感性と表現」が日々の生活や遊びの中で育ってほしい姿です。

 子どもは、成長の過程で自然に育まれながら大切なものを身につけていきますが、この「十の姿」は、変わりゆく社会に順応出来るように、「生きる力を身につける」という幼児教育のひとつです。私たちも、ぜひ目指したい姿だと思います。

 1200年前、伝教大師最澄さまは、世界で初めての学則、山家学生式(学生の目標)の中で
「道心ある人」「よく言い よく行う人」「一隅を照らす人」「悪事は己(自分)に向け 好事は他に与える人」「己(自分)を忘れて他を利する、慈悲の人」を養成するのだと述べています。

 この様な人が国宝的人材であり、比叡山の学僧にはぜひ目指してほしいと願われたのです。今、コロナ禍だから何も出来ないと諦めないで下さい。出来る事を模索してはどうでしょうか。

 生きる力を高めるために「十の姿」や「山家学生式」の中から、自分に合う姿を見つけてください。

ページの先頭へ戻る