「忘己利他」の精神を広く伝え ―延暦寺年賀式―
令和3年延暦寺年賀式が1月8日、延暦寺会館瑞峰之間で行われた。例年、宗内諸大徳や山門出入方などの有縁者が多数集うが、今年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止から規模を縮小。阿部昌宏天台宗宗務総長や延暦寺一山住職ら関係者のみが出席し、新年の門出を祝った。

森川座主猊下は“お言葉”で、まずはコロナ禍の昨年の状況に触れられ「世界中を席巻し目に見えぬ恐怖に苛まれた一年であり、日本においても猛威を振るう事態は正に国難でありました」と回顧された。その上で「この事態に立ち向かい、新しい取り組みにも挑戦し、前向きに懸命に務めを果たしておられる人びとに想いをいたすと、心からの敬意と明るい希望を持って早期終息と人心安寧の祈りを捧げることができます」と述べられた。また、宗祖伝教大師一千二百年大遠忌の御祥当を本年に迎え「大師が身命を賭して取り組まれた『志』とは、この国をこの世界をみ仏の慈悲に目覚めた人=菩薩の働きによって美しく浄らかにすることであります」と教示。「『己を忘れて他を利する』の精神を広く伝え、『一隅を照らす』人物が充ち満ちる国づくりに邁進しなければなりません。大師の鴻恩(こうおん)に報いるため共に努めましょう」と呼びかけられた。
来賓を代表して阿部宗務総長は「伝教大師最澄様の教えが比叡山根本中堂に掲げられている不滅の法灯とともに、動乱や変遷を経ても、今日も輝いている。今年6月の祥当法要をはじめ、様々な願いがこもった事業が、滞りなく遂行できるよう、本末一如、和合の宗団を目指して頑張りたい」と新年に当たっての決意を述べた。
―「自他同心」で行動を―
毎年発表している「比叡山
から発信する言葉」として「自他同心」が水尾執行から紹介された。
まず他人を思いやり、身体は近づかなくても、心と心を近づけ、相手の心になって行動しようとの願いが込められている。
水尾執行は「困難な中だが、我々は仏天と宗祖大師、祖師「自他同心」で行動を方のご加護を信じ、前向きに懸命に務めを果たし、人心安寧の祈りを捧げてまいらねばならない。そしてその先に明るい光明が見える、そういう一年にしたいと心から念じている」と話した。