天台宗について

法話集

No.255胸を張る生き方

 数年前から当寺では月に一度「坐禅会」を催しており、有難いことに毎月一定数の檀信徒さんが足を運んでいただいております。当然、座禅を組む訳ですから、背筋を伸ばし姿勢を整えなければなりません。なので「背筋を伸ばしましょう」とお伝えしていたのですが、背筋を伸ばそうとする余り無駄な力が入ってしまい、腰に負担がかかってしまうという方が何人もいらっしゃいました。

 そこで身体に負担がかからないようにと「両肩を後ろにもっていくようにし、胸を張りましょう」とお伝えしますと、自然な形で参加者の背筋がピーンと伸びていくのです。些細なことではありますが、実に簡単な方法で無理なくキチンとした姿勢になることができました。

 ここまでは姿勢についてのお話しをさせていただきましたが、標題についてすすめていきたいと思います。一昔前は「お天道様に恥じないようにシャンとして生きなきゃダメだよ」なんてことを仰る方もいらっしゃいましたが、「胸を張る生き方」とはどういう生き方を指すのでしょうか。種々様々な考えがあるのは承知の上ですが、私は「自信を持つこと」が必要なのではと考えております。

 では、どうやって自信を備えるのか。それは、日々の暮らしの中で「自分にできることを一生懸命にする」ことなのではと思います。「自分の為、誰かの為に一生懸命になる」そうすることによって、例え目に見えなくとも、例え僅かばかりであったとしても、その人の自信となり積み重なっていき、その積み重ねこそがその人の芯となり胸を張らせるのではないでしょうか。昨今「正直者が馬鹿を見る」なんて言葉が生まれてしまうくらい、他者の足を引っ張るような出来事が多く見受けられる気がいたします。ですがそんな時だからこそ、何事にも余計なことを考えずがむしゃらに取り組んでもいいのではないでしょうか。「善因善果」という言葉もあるとおり、善行は等しく自分に善果をもたらしてくれるのですから。


(文・埼玉教区 徳性寺 鷲田 峰大)
掲載日:2025年09月01日

その他のおすすめ法話

ページの先頭へ戻る