天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 新年特別号

発行日:2007/01/01
二十周年を迎える比叡山宗教サミット

「比叡山宗教サミット」は、本年に二十周年という節目の年を迎える。一九八七年の第一回比叡山宗教サミットで、我々は世界平和が一日も早く訪れることを祈った。それから二十年、世界はテロリズムの恐怖にさらされている。怨念と報復の連鎖を断ち切るために、私たちは今年八月に比叡山を会場に、世界各地の宗教指導者たちと対話し、祈り、相互理解を深め、平和の実現を目指す。

 第一回比叡山宗教サミットが開かれるまでには、世界平和を願う先達の熱い願いがあった。そのひとり故葉上照澄大阿闍梨は、エルサレムの帰属問題で困難な関係にあるイスラムとカトリックを和解させるという思いをもって、イスラムの最高神学府総長と会談している。一九七六年のことである。
 またローマ教皇ヨハネ・パウロⅡ世聖下は、一九八一年に来日した折「宗教協力には、日本の偉大なる教師・最澄の言葉を用いるならば『己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり』の精神が最も大切である」と語り、日本の宗教者を感激させた。この教皇の思いは一九八六年、アッシジにおいて世界宗教者平和祈願集会の開催に結実する。
 そして山田恵諦第二百五十三世天台座主は「日本の仏教者は、これまで世界平和という大きな問題の前ではなすすべもなく沈黙し、手をこまねいてきた。これだけ世界に紛争が多発し、その原因に多くの宗教が絡んでいる現状をみると、一神教にはなしえぬ役割をこれからの仏教は果たすことができるのではないか」と考え、アッシジの精神を引き継いで、サミットをスタートさせたのである。
 キリスト教も、イスラム教も、仏教も、どの宗教であれ、人類の幸福と平和を願わないものはない。これまでの対話と相互理解を通じて、そのことは共通認識となった。

 平和を未来のあるべき現実に

 第一回と十周年の記念サミットは、日本宗教連盟協賛の五団体と世界連邦日本宗教委員会、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会が主催団体として「日本宗教代表者会議」を組織して開催した。
 比叡山はもちろん、バチカンやアッシジ、カンタベリーはじめ世界中で平和を祈る時刻にあわせて「平和の鐘」が打ち鳴らされた。
 昨年イタリア・アッシジで開かれた第二十回世界宗教者平和の祈りの集いの開会式に天台宗は代表団を派遣したが、開会式で杉谷義純天台座主特命代表は「宗教者は理想ばかり説くという批判に対し、宗教が説くことは未来のあるべき現実であるということを示そう」と参加者に呼びかけた。
 第一回の宗教サミット比叡山メッセージで「平和とは、単に戦争がないということではなく、人間どうしの睦み合う融和の状態、人類共同体の実現をいう」と訴え、十周年記念サミットでは「平和のために祈ることは、平和のために働くことである。それは平和のための自己犠牲と奉仕に徹することに外ならない」と宣言した。
 比叡山メッセージの理念を実現し、宗教の持つパワーを、世界平和のために集結すべく、今年の比叡山宗教サミット二十周年・世界平和祈りの集いは開催される。

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