天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第284号

イタリア・アッシジで
第40回「世界宗教者平和の祈りの集い」開催

「武器を持たず、武装を解く平和に向けて」
来年の比叡山での40周年へ招請状を手交

  カトリックの聖地イタリア・アッシジで現地時間の10月25日から27日、第40回「世界宗教者平和の祈りの集い」が開催された。

「武器を持たず、武装を解く平和にむけて」を大会テーマに、世界各国から350名を超える諸宗教の代表者らが参集。世界平和に向けて対話を交わし祈りを捧げた。

天台宗からは、天台座主御代理の杉谷義純妙法院門跡門主を名誉団長とする代表団が派遣され、来年迎える比叡山宗教サミット40周年記念「世界宗教者

 「世界宗教者平和の祈りの集い」は、1986年に当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世聖下の呼びかけにより、カトリックの聖地アッシジで初めて開催された。第2回以降は、信徒団体の聖エジディオ共同体が主催し、年1回、ヨーロッパ各都市で続けられている。
 
 記念すべき初回には、第253世天台座主の山田惠諦猊下も参加された。以来、その「祈りの集いの精神」は比叡山宗教サミットへと引き継がれ、比叡山での祈りの集いも、来年で40周年を迎える。
 
 今回の代表団は、杉谷門主ほか、細野舜海宗務総長、星野最宥延暦寺副執行ら計11名で参加した。25日の開会式には、ウンブリア州のステファニア・プロイエッティ知事や聖エジディオ共同体創設者のアンドレア・リッカルデイ教授が歓迎の辞を述べ、本大会の趣旨を解説。そして40年の歴史を振り返り「アッシジの精神」が山田座主猊下らにより比叡山に継がれたことを紹介した。
 
 続いて、世界の宗教者代表の一人として杉谷門主が登壇し力強い講演を行った。杉谷門主は、「『アッシジの精神』と『比叡山の精神』は平和に向かって今も吹き続けている。再びアッシジに集うことは、東洋、西洋にかかわらず、私たちが新たな決意をもってともに歩み続けていく力を与える」と力説し、会場から深い賛同を得た。
 
 続く26、27日は市内24会場で分科会が行われ、このうち「共に世界を修復する」と題した分科会では、細野宗務総長がイランやパキスタン、ドイツなど7ヵ国の宗教指導者らと活発な議論を交わした。
 
 細野宗務総長は、宗祖伝教大師の『忘己利他』の精神を強調し「宗教や文化の違いを超えて互いを尊重し、共生、祈り、対話、そして利他の実践が人類を救い世界を再生する鍵となる」と主張。あわせて比叡山宗教サミットの理念を紹介し、来年迎える40周年記念への参加を呼びかけた。
 
 最終日には、各宗教・宗派別による平和の祈り法要が市内各所で営まれ、杉谷門主を導師に日本仏教の参加者代表による「日本仏教世界平和祈願法要」が厳かに奉修された。その後の閉会式では「平和宣言文」が採択され、全日程を終えた。
(1月1日号で詳報)

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

「期待するから裏切られたと思う。
期待するのはやめよう

 人間関係で悩んだり、傷ついた経験がある人なら、一度はこう自分に言い聞かせたことがあるでしょう。
 
 雑誌のインタビューで、ある経営者がこの言葉を語られていました。その方のいきさつを少し紹介します。起業して数年が経ったころ、信頼していた社員が同業他社に移籍したそうです。

 いずれは右腕になって欲しいと信じて育てた社員だっただけに、裏切られたという喪失感で、立ち直れないほど落ち込んだそうです。

 ですが、落ち込んでばかりはいられません。そんなときに支えてくれたのが家族であり、社員でした。そして相手の行動そのものより、「こうしてくれるはずだ」と、自身が期待しすぎたことが原因だと気がつかされたと回顧されていました。
 
 読了後、お釈迦さまの「四苦八苦」の教えを思い出しました。人生は苦であると教えられ、4つの根本的な苦しみ(生老病死)に愛別離苦(あいべつりく)、怨憎会苦(おんぞうえく)、求不得苦(ぐふとっく)、五蘊盛苦(ごうんじょうく)を加えた教えです。  

 その一つである「求不得苦」が、まさにこの例にあたるでしょう。求めても思い通りにならない苦しみです。お釈迦さまが苦しみの根本とみたのは、期待そのものではなく、思い通りにならないものを思い通りにしようとする執着でした。
その経営者は、インタビューの最後にこう語っていました。
 
 「期待をやめることではなく、手放すことも大切なんですね」と。
 
 裏切られたと感じたとき、つい「期待したわたしが愚かで、悪かったんだ」と自分を責めてしまいがちです。
 
 無理に相手をコントロールしようとする執着をそっと手放す。そして、相手を自分とは違う一つの存在として尊重すること。そう考えることが他者との関係をうまく保ち、自分自身の心を軽やかにする秘訣ではないでしょうか。

鬼手仏心

急がば回れ

 日々の生活や仕事の中で、私たちは様々な問題や課題に直面します。スピード感を持って素早く対応する事はもちろん大切ですが、複雑で難しい問題であればある程、じっくりと時間をかけて深く考える事が必要になります。
 
 この「急がば回れ」という教訓の重要性を伝える象徴的な例が、大谷翔平選手の日本ハム入団時のエピソードにあります。当時、大谷選手とご両親は「高校卒業後、すぐにメジャーリーグに挑戦する」という意思を固め、記者会見まで開きました。日本球団への入団の可能性は極めて低い状況だったにもかかわらず、日本ハムはドラフト1位で彼を指名したのです。
 
 指名後にスカウト部長は大谷選手のもとへ何度も足を運び、懇切丁寧に説明を重ねました。その際に提示された「過去にメジャーへ渡った日本人選手を投手・打者別にまとめた資料の中に1枚の「琵琶湖の写真」が含まれていました。
 
 琵琶湖は「急がば回れ」という諺の由来となった場所です。かつて京都へ向かう際、琵琶湖を船で渡る近道は船酔いや悪天候のリスクがあったため、距離としては遠回りでも陸路(瀬田の唐橋)を通る方が確実に到着出来る、という教えから生まれた言葉です。
 
 スカウト陣は琵琶湖の写真を通じ、直ちにメジャーでの活躍という目的地へ渡る近道を選ぶより、まずは日本のプロ野球でじっくり土台を作る「遠回り」こそが、メジャーでの活躍という目的地へ確実に辿り着く方法であることを示そうとしたのです。
 
 さらに栗山監督からの「エースで4番を目指そう」という情熱的な言葉もあり、大谷選手は日本ハムへの入団を決意しました。

 何か重要な物事を決断する際にこそ、焦らず時間をかけて思考を深めることが最善に繋がるということを、私たちは常に肝に銘じておかなければならないと思います。

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