天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第283号

第二百六十世天台座主に堀澤祖門大僧正がご上任

「忘己利他」の精神で精進を誓われる

 藤光賢第二百五十九世天台座主猊下のご遷化に伴い、9月15日に堀澤祖門探題大僧正(延暦寺一山泰門庵住職)が第二百六十世天台座主にご上任された。

 堀澤座主猊下は昭和4年生まれの97歳。戦後初の十二年籠山行を満行され、叡山学院院長、三千院門跡門主を務められた。

 堀澤座主猊下は「一切衆生のために全心身を捧げ勤めたい」との決意を示されている。

 堀澤座主猊下は、新潟県小千谷市出身。京都大学経済学部中退後、昭和25年に故・叡南祖賢大阿闍梨に師事し得度受戒。

 昭和39年に十二年籠山行満行。同50年に延暦寺居士林所長に就任し、平成4年には比叡山行院院長、同12年に叡山学院院長を歴任して後進の指導に当たられた。

 平成25年には、京都五箇室門跡のひとつ三千院門跡門主に就任され、令和2年10月までお務めになられた。

 また同14年に戸津説法を勤仕され翌年望擬講に。令和4年10月に探題に補任され、次座探題となられてからは藤猊下を補佐されてきた。

 このほか天台宗総合研究センター理事、天台宗教学振興事業団理事、一隅を照らす運動顧問、天台宗国際平和宗教協力協会副総裁などをはじめ、多くの要職を歴任されている。


宗祖が示された慈悲の精神で

 上任式は9月16日午前11時から、滋賀院門跡で奉修された。

 天台宗と延暦寺の両役員が出仕のもと、内仏殿で大導師をお勤めになりご宝前に上任を報告された。続いて梅の間において、細野舜海宗務総長から梶井袈裟が奉呈された。

 堀澤座主猊下は次のように“お言葉”を述べられた。
「極めて慌ただしく、驚きの中でお示しを受け、今日こうして尊職を継ぐことになりました。
 
 誠に万事、不適なところがいろいろありますけれども、これに従って座主職を賜りたいと思います。現在、天台宗だけでなく、仏教はじめ宗教界全体の信頼度が落ちております。

 これを何としても新しい方向に向かって開いていかなければなりません。

 宗祖伝教大師の仰る『悪事を己に向かえ、好事を他に与え、己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり』。この慈悲の精神が最大最高であると思います。

 自分のことはとにかく、一切衆生のために全心身を捧げたく存じます。ここに座主として、天台宗宗徒、檀信徒の皆さま方とともに立ち上がり、勇気を出して勤めて参ります。よろしくお願いいたします」。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

サヨナラを誰かに告げるたびに
僕らまた変われる 強くなれるかな
たとえ違う空へ飛び立とうとも
途絶えはしない想いよ 今も胸に

いきものがかり『YELL』

 路上ライブ活動を地道に積み重ね、2006年に『SAKURA』でメジャーデビューして以降、数々の有名楽曲を世に生み出してきた、いきものがかりさんの『YELL』から抜粋しました。

 HNK 全国学校音楽コンクールの課題曲として書き下ろされたこの曲には、学友と別れる不安や将来に対する葛藤を抱える学生たちの背中を押す言葉が綴られています。

 さようならを告げる時の悲しみ、切なさ、歯がゆさがないま交ぜになった、えも言われぬ苦しみを感じるのは子どもも大人も変わりありません。

 親しい人や愛するものと別れる苦しみを仏教では「愛別離苦」と呼び、生きる上では避けられない苦しみのひとつとしています。

 必ず来ると分かっていても、どうしても今の心地よい時間が去った後の事を考えたくないものです。

──永遠など無いと 気づいたときから 笑い合ったあの日も 唄い合ったあの日も 強く 深く 胸に 刻まれていく

と歌詞は続きます。別れの時が来るからこそ日常の何気ない風景も、記憶や心の中に根付きます。

 別れを決して悲観するのではなく、思い出やその時に抱いた感情はこれから長い人生を歩むためのエネルギーに変えていくことを、この歌は教えてくれているのかもしれません。

 「サヨナラは悲しい言葉じゃない」

鬼手仏心

全世界に広がる蜘蛛の巣

 1991年8月6日、イギリスの科学者ティム・バーナーズ・リー博士によって「WWWシステム」が発表されました。

 1992年に、日本初のホームページが開設され、1993年には、無料で誰でも使えるようになりました。

 世界を変えたシステム「WWW.」ですが、そもそもの名前は「World Wide Web」と言います。「Web」は「蜘蛛の巣」という意味、『全世界に広がる蜘蛛の巣』という大風呂敷を広げるような話なのです。

 世界中に網の目のように張り巡らされた蜘蛛の巣のイメージから思い出したのが、伝教大師のお言葉「一目の羅、鳥を得ることあたわず」=一つの目の網では、鳥を捕まえることは出来ない、一つや二つの宗派で全ての人を救うことが出来ようか…です。

 20年程前、比叡山延暦寺が企画、佐川急便(現SGホールディングス)提供のTV番組「比叡の光」の担当をしていた頃、京都教区曼殊院門跡門主の半田孝淳大僧正(後の第256世天台座主猊下)に、世界平和についてお話を伺うと、この言葉を引用され、「戦禍のない平和な世界を実現するためには、世界中の人たちが、手を携えていくことが必要だ」と、熱く語られていた記憶が甦りました。

 来年の比叡山宗教サミット40周年に向けて、この「一目の羅、鳥を得ることあたわず」を意識してもらえればと思います。

 そして、この「WWW.」というシステムを使いこなして、世界中を駆け巡る情報をしっかりと捉え、より広く、多面的に、物事を見ていくことによって、視野を広げ、周りの動きをしっかりと把握することができれば、相互理解が進み、その先に、世界平和への道が開けていくのではないでしょうか。

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