天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第282号

令和8年熊本地震で宗内寺院に被害
天台宗と九州西教区で災害対策本部設置

 天台宗は7月28日に発生した令和8年熊本地震で、翌29日に災害対策本部を設置し救援活動を開始した。
 
 熊本市南区の長壽寺(角本尚隆住職)で大きな被害が確認されており、管轄する九州西教区の嘉瀬慶文宗務所長らが直後に災害備蓄品を持参し、被災状況などを視察した。
 
 天台宗及び九州西教区では義援金の協力を呼びかけている。

 熊本県内には14カ寺あり、最大震度6強を観測した南区の長壽寺と延壽寺(角本尚雄住職)で大きな被害が出ている。

 長壽寺では本堂内の厨子や仏具が多数倒れ、壁が剥落しているほか、境内の手水舎の屋根や灯籠が倒壊し、墓石がズレるなどの被害が生じている。

 31日には、九州西教区内の住職と宗務所職員ら数名が駆けつけ、角本住職の指示のもと本堂内の片付け作業を実施した。

 また延壽寺でも建物のひび割れや石塔の倒壊が確認されている。なお、その他の県内寺院では石仏や堂内仏像の破損はあるものの、本堂建物の被害はなく、幸い怪我人はなかったという。

 天台宗務庁には29日付けで「令和8年熊本地震天台宗災害対策本部」が設置され、本部長に細野舜海宗務総長、副本部長に獅子王圓明延暦寺執行が就任した。

 「被害寺院をはじめ被災地の情報収集、現地への救援調査団の派遣、救援方法の決定、救援活動の推進、救援募金の依頼」の5項目を重点に救援活動を進めることを決めた。

 30日には全寺院に文書を送付して支援を呼びかけ、31日には熊本県に向けて備蓄用飲料水75箱を発送した。   

 地震発生以降、九州西教区では教区内住職や宗務所職員らが交代で被災地入りし、行政や支援団体等に協力して支援物資の搬入や清掃活動などを継続している。

 9月14日には活動拠点とする佐賀県三養基郡の妙覺院(一番ヶ瀬順海住職)で四十九日法要を奉修し、犠牲者を追悼するとともに、早期復興を祈願する。

 また天台宗防災士協議会の山石亮秀会長ら3名が8月19日に現地入りし、教区職員らと支援物資の搬入作業を行い、義援金を贈呈。

 その他、全国の各教区や寺院からも義援金が寄せられており、支援の輪が広がっている。

 天台宗災害対策本部では、一隅を照らす運動総本部「地球救援事務局」を窓口とする災害義援金の募金を呼びかけている。(6面参照)寄せられた義援金や支援金は被災地の各行政や公的支援機関などを通じて送られる

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

長い道のりでした

金栗 四三(かなくりしそう)(日本のマラソン選手)

 かつてNHKの大河ドラマ『いだてん』の主人公にもなった、「日本マラソンの父」と呼ばれる人物の言葉です。

 熊本県出身の金栗さんは、幼少期は虚弱体質でした。しかし、往復12キロの山道を走って通学するうちに足腰が鍛えられ、健康な体を手に入れます。学業も優秀だった彼は東京高等師範学校(現在の筑波大学)へ進学し、1912年のストックホルムオリンピックに日本人初のオリンピック選手として出場しました。
 
 ところが、慣れない環境のなかレース途中に熱中症で倒れてしまいます。農家で介抱されたものの意識が戻ったのは翌日で、棄権(きけん)の連絡ができないまま帰国を余儀なくされました。日記には「この恥をすすぐため、粉骨砕身(ふんこつさいしん)してマラソンの技を磨く」と無念の思いがつづられています。
 
 その後、金栗さんは箱根駅伝の創設や女子体育の振興など、日本のスポーツ界の発展に大きく貢献しました。
 
 1967年、スウェーデンオリンピック委員会は、当時の競技データで彼が「失踪中」扱いになっていることに気づき、大会開催55周年式典に75歳の金栗さんを招待しました。こうしてゴールテープを切ったタイムは「54年8カ月6日5時間32分20秒3」。史上最も遅いマラソン記録です。
 
 このとき彼は、「長い道のりでした。この間に妻をめとり、6人の子供と10人の孫ができました」とユーモアを交えてスピーチしました。

 人生には、思い通りにならないことや、悔いの残る出来事があります。そんな大きな挫折や失敗であっても、その人の心持ちと行いによって、かけがえのない豊かな歩みへと変えることができる──。金栗さんはその姿を、生涯をかけて身をもって示してくれたのです

鬼手仏心

熱中症対策

 厳しい暑さが続く中、特に気をつけたいのが「熱中症」です。いまや日常的な体調管理では対応しきれない水準に達し、もはや「災害級」とも言われています。気象庁が4月に40度以上の日を「酷暑日」と定義付けたのも、その差し迫った危険性を明確にするためです。   

 熱中症は気温や湿度が高い環境で体温調節がうまく働かなくなり、めまい、頭痛、吐き気、倦怠感などの症状を引き起こします。重症化すると意識障害を招き、命に関わる事態にもなりかねません。

 予防の基本は、暑さを避けることです。外出の際は日傘や帽子を活用し、出来るだけ日陰を歩きましょう。室内でも油断せず、エアコンや扇風機を適切に使い、涼しい環境を保つことが大切です。また、喉が渇いていなくても、こまめに水分を補給しましょう。大量に汗をかいた場合は、水分だけでなく塩分の補給も忘れてはいけません。
 
 特に注意したいのが、高齢者や子どもです。高齢者は暑さや喉の渇きを自覚しにくく、子どもは体温調節機能が十分に発達していません。だからこそ大切になるのが周囲からの「声がけ」です。
 
 職場での熱中症対策が義務化されて2度目の夏を迎えますが、各人が危険を正しく自覚し、行動に移すことです。自分自身の体を守るのはもちろん、他者に気を配る。そうしてお互いを利し、「大丈夫ですか?」と声をかけ合うことこそが、まさに「一隅を照らす」行動なのではないでしょうか。

 どうか無理をせず、自身や家族、周囲の人の体を大切にしながら、この過酷な暑さを乗り切っていきましょう。

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