天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第277号

宗門担う人材育成の一環に

叡山学院生がタイ・スタディーツアーに初参加

一隅を照らす運動総本部

 天台宗一隅を照らす運動総本部(荒樋勝善総本部長)と叡山学院(坂本廣博院長)は、3月11日から15日までタイで「一隅を照らす運動スタディーツアー」を初めて実施した。

 参加した学院生5名は、スラム視察や共同生活を送る子どもたちとの触れあいを通し、同運動への理解を深めた。

 宗門関係学校の高校生らを対象としたツアーは毎年開催してきたが、叡山学院生が参加するのは初めて。

 アジアの貧困地域の現状と課題に直接触れる機会を設ける当初の目的に加え、天台宗の将来を担う学生らに一隅を照らす運動への理解と、その実践者になってもらおうと企画された。

 5名の学生に加え荒樋総本部長と総本部職員の7名は、バンコク到着後の12日、ドゥアン・プラティープ財団本部を訪問。創設者のプラティープ・ウンソンタム・秦女史と秦辰也氏と面会した。

 同財団は、「スラムの改善は教育から」を信念にプラティープ女史が1978年に受賞した「マグサイサイ賞」の賞金を投じて設立した団体で、教育、健康、社会福祉、人材育成、緊急支援を5本柱に活動している。

 教育の機会に恵まれなかったり、薬物依存のスラムや農村部の子どもたちを支援する男女2校の「生き直しの学校」を運営している。

 参加者らは、財団についての説明を受けたあと、隣接するバンコク最大級のスラム街、クロントイ・スラムを徒歩で視察し、厳しい生活環境などを目の当たりにした。

 続いて3歳から19歳の女の子が共同で生活する「生き直しの学校」カンチャナブリ校を訪問。寝食を共にしながら、サッカーやダンス、腕輪やクラトンと呼ばれる灯籠作りなどの作業を通して交流した。

 財団本部訪問に併せてワット・サパーンを参拝し、東日本大震災とスマトラ島沖地震による物故者への慰霊法要を日本式で奉修し、さらに両国僧侶で平和を祈願した。

 参加学生からは「日本はモノが溢れて便利だが、孤立しているのでは」、「IT機器から離れた生活は充実していた」など、感銘を受けた意見が多かった。

 引率した荒樋総本部長は「現地を訪問したことで、新たな気づきを得たとの感想があった。今回の経験を糧に、積極的な人材に育ってほしい」と期待を寄せている。

 総本部では、今後大正大学や天台宗内の学生らの参加を呼びかけたいと考えている。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

なんでも自分のものにして、持って帰ろうとすると、
むずかしくなっちゃうんだよ。 ぼくは見るだけにしてるんだ。

そして立ち去るときには、頭の中へしまっておく

トーベ・ヤンソン(『ムーミン谷の彗星』より)

 81年前に誕生し、今でも多くの世代に愛されているムーミンシリーズは、作者のトーベ・ヤンソンが幼少期に書いた落書きが原形と言われています。
 
 白く丸々とした体型が特徴のムーミン族の少年ムーミントロールと仲間たちが繰り広げる奇妙でありながらも心温まる不思議な物語です。

 今回掲げたのはスナフキンという旅人が発した言葉です。彼は自由を愛し、家を構えずリュックサックひとつという身軽さで世界中を旅しています。架空のキャラクターの台詞ではありますが、現実世界でも大切な考え方のように思えます。

 スマートフォンの機能が向上し、誰でも手軽に写真や動画を撮影できるようになりました。雨上がりの虹や花火が広がる瞬間など一瞬の美しさを記録に収めたいが故に、目の前の景色を楽しむ余裕がなくなっていることはありませんか。

 最終的には画面に切り取られ小さくなった無機質な風景と写真を撮ることに必死になったことだけが記憶に残り、眼前にあったはずの感動が薄れてないでしょうか。

 仏教には「少欲知足」という考え方があります。欲を少なくというと欲望を我慢すると思われがちですが決してそうではありません。

 自分が持っていないものを求めすぎず、既に持っているものに対して不満を抱かない事が大切だと言われています。「なんでも自分のものにして、持って帰ろうとする」という考えを変えるだけで心に余裕が生まれるのです。

 求めるもの全てを手に入れようと思うと際限がありませんが、頭に入れるとなると情報の取捨選択が必要になってきます。そうして残ったものにこそ、本当に価値があるのでしょう。

 もちろん、誰もがオリンピック選手のような目覚(めざ)ましい結果をあげられるわけではありません。しかし、他人と比べる必要のない「できた!」という達成感であれば、誰しもが得られるはずです。達成感とは自分だけのものであり、誰にも奪われることはありません。

 指先に触れても痛みすら感じない一滴の水が、休まず同じ場所に落ち続けることで巨大な岩をも穿つ─。その「継続」がもつ静かなるすさまじさは、私たちの日常の積み重ねにも通じます。

 今日という日の一歩を大切に、コツコツと歩みを進めることで得られる満足感こそが、あなたにとっての「自分だけの栄光」となるのではないでしょうか。
 

鬼手仏心

失敗を恐れずに

 桜前線が北上、寒さから解き放たれ、思いっきり外の空気を吸い込みたい季節となりました。こうした季節の変わり目には、体調管理をしっかりしたいところです。

 健康な一日の始まりは、朝食からです。私は、基本ごはん派、時々パンです。少し前から高血圧の薬を飲んでいて、食事指導では味噌汁は控えなさいと言われているので、ごはんに付き物の味噌汁をどうするか、葛藤の日々です…。

 さて、朝食は、ごはん派・パン派のみならず、シリアル系の方もいらっしゃると思います。そのシリアルの代表格「コーンフレーク」誕生のエピソードをご紹介します。

 医学博士のジョン・ケロッグ博士が、トウモロコシを使った病人食の試作をしていたところ、乾燥のし過ぎでカサカサになり、失敗してしまいました。しかし、これを試食したら、なかなか好評で、それが『コーンフレーク』として売り出すきっかけとなったそうです。

 「あ~ぁ、やっちゃった…」と、そのまま放置していたら、単なる失敗作で終わってしまっていたものを、どんな味か試してみようと次の行動を起こした事が、百年以上売れ続けている定番商品の誕生につながりました。

 いわゆる「失敗を糧に」とは、少しニュアンスはちがいますが、たとえ失敗しても、それを次につなげる行動に移していく事がいかに大切であるかということでしょう。

 ブラッシュアップしていこうという前向きな気持ちで事に当たる中で、失敗することもあるでしょう。でも、失敗を恐れずにいろいろ試行錯誤を重ね、よりよい形を作っていく気持ちを忘れず、何事にでも臨んでいく。その積み重ねが大きな成果として実を結ぶのだと思います。

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