天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第271号

7年ぶりに一隅を照らす運動推進大会

実践3つの柱で被災地支援継続

陸奥教区

 一隅を照らす運動陸奥教区本部(千葉亮賢本部長)は9月5日、岩手県奥州市の前沢ふれあいセンターで「一隅を照らす運動岩手大会」を開催した。

 コロナ禍により平成30年に仙台市で開かれて以来、7年振りの大会に約400人が参加。

 一隅を照らす運動の精神を再確認し、東日本大震災をはじめ各被災地の早期復興と世界平和を願いともに祈りを捧げた。

 陸奥教区本部は3年毎に一隅を照らす運動推進大会を開いてきたが、令和2年頃から流行が始まった新型コロナウイルス感染症により開催中止を余儀なくされていた。

 実に7年ぶりの開催となった今大会には、教区全域より約400人が参加し、再会を喜び合った。

 菅原光聴副本部長の開会の辞で開幕後、千葉本部長は「普段の生活の中にも一隅を照らす運動の精神を活かし、菩提寺の住職とともに活動してもらい生活に溶け込める運動を目指したい」と決意を述べた。

 同教区出身で現在天台宗参務の四竃亮真法人部長は「一人ひとりが一隅を照らすことにより、社会が照らされていく。改めて一隅を照らす運動の精神を認識していただき、いっそう運動への協力を」と呼びかけた。

 続いて「伝教大師報恩並びに災害復興祈念法要」を千葉本部長の導師で奉修。教区内住職ら出仕のもと、叡山講福聚教会陸奥地方本部の会員らによる御詠歌奉納とともに今も復興途上にある被災地の安寧を祈願した。

被災経験を
後世に繋ぐ

 また第二部では、一隅を照らす運動広報大使の露の団姫師による落語、県沿岸部に伝わる郷土芸能の大槌城山虎舞の迫力ある演舞が大会に華を添えた。

 今大会では、「災害・たすけあい・みとめあい」をテーマに座談会が開かれた。国難とも言われる東日本大震災から14年が経ち、被災地には徐々に活気が戻りつつある。

 しかし国内外では災害が頻発し、いまだ戦争が絶えない状況が続く。多くの人びとが被災者となった同教区として、震災当時の様子を後世に伝える責任から座談会を企画した。

 四竃法人部長、露の団姫師、天台仏教青年連盟前副代表の小林伯裕報恩寺住職、大槌城山虎舞のメンバーをパネリストに、菅野宏紹陸奥教区本部事務局長が進行した。

 各者が体験した震災当時の様子やボランテイア活動に従事した経験談などが語られ「先祖らが繋いでくれた絆が有事の際に活きた」、「被災者への共感の気持ちが大切」などの意見が出された。また防災への豆知識なども紹介された。

 菅野事務局長は「支援にも一隅を照らす運動の『生命・奉仕・共生』の実践3つの柱で成り立っていることを話しを聞いて改めて感じた。一人ひとりが出来うることから実践し、示すことで周りに広がることを願っている」とまとめた。

 なお参加者からの浄財として約130万円が同総本部地球救援事務局に寄付された他、教区仏教青年会による募金活動も行われた。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

彼らは統計報告の数字ではない。

彼らは人間であり、人間の形をしたたくさんの物語の束なのだ。

そこには愛と希望、痛みと失望、奪われた未来などの、
限りなく複雑な物語がある。

アーティフ・アブー・サイフ著『ガザ日記』

 2023年10月7日に始まったパレスチナ・イスラエル戦争から、2年が経過します。数多くの国や勢力の思惑が交錯(こうさく)するこの地域の問題は、しばしば「世界で最も解決が難しい紛争」と呼ばれています。

 200万人以上のパレスチナ難民が暮らすガザ地区は、過去にも幾度となく戦闘の舞台となってきましたが、今回のイスラエルによる侵攻は例を見ない規模の被害をもたらしています。

 ガザの保健当局の発表によれば犠牲者は6万人を超え、その多くが民間人とされています。

 私たちは災害や紛争の報道を耳にする際、多くの場合「犠牲者数」で被害の深刻さを推(お)し量(はか)ります。しかし、その数字の背後には、一人ひとりの生活や営みが存在していることを忘れがちです。

 旧ソ連の独裁者スターリンが残したとされる「一人の死は悲劇だが、数百万人の死は統計にすぎない」という言葉は、人間の命を数字に矮小(わいしょう)化する冷酷さを象徴しています。

 遠く離れた場所で起きているガザの惨状も、私たちがニュースで目にする時には、そこで暮らす人々の現実を自分のこととして想像するのは難しいかもしれません。

 しかし、犠牲となったのは私たちと同じように日々を生き、家族や友人と語らい、笑い合っていた人々です。その営みを突然奪うのが、紛争や災害にほかなりません。

 しかも、戦争は自然災害とは違い、人間の手によって引き起こされます。国際社会の枠組みが軽視される今日、戦争はどこで起きても不思議ではありません。明日、私たちの隣で起きる可能性すらあるのです。

 だからこそ、犠牲者を「遠い国の出来事」として片づけてはならないでしょう。心を寄せ、他人事ではなく自分事として受け止める姿勢こそが、平和に近づくための一歩となるのではないでしょうか。

鬼手仏心

眠りの科学

 夏の寝苦しい熱帯夜から解放され、過ごしやすい秋の夜になりました。気持ちよくグッスリと眠れている人もいれば、逆に、せっかくの涼しい夜だからと、あれこれと時間を過ごし、気がつけば夜更かしをしてしまい、寝不足気味の人もあるかと思います。

 実は、日本人の多くは、毎日の睡眠不足が積み重なり、「睡眠負債」を抱えている状態の人が多いようです。

 睡眠負債は、身体の不調を招くだけでなく、生活の質に悪影響を及ぼします。集中力や判断力の低下、更には、ストレスに対して弱くなる傾向も…。

 仕事や勉強、趣味の時間のために、睡眠時間を削っていたり、あるいはスマホを触っているうちに、つい時間がたってしまっていたりと、睡眠負債の原因は様々だと思いますが、注意すべきは、寝る間際に脳が活性するような行動です。

 十分な睡眠を取る上でのポイントは、自然と眠気が来るよう就寝時間前(1~2時間)は、脳に刺激を与える行動を取らないよう心がけることだといわれています。  

 そして、起床時間も、一定であることが大事です。その理由は、人の体内時計と、地球の自転の時間差をリセットする必要があるからです。

 体内時計は、1日25時間の周期(生命が誕生した頃、太古の地球の自転は、約25時間周期であったことの名残)ですが、現在の地球の自転は、1日24時間周期で1時間の差があります。

 その差は、朝日を浴びることでリセットされます。これは、朝の心地よい目覚めで、一日がスタートするイメージにピタッとはまるので、なるほどです。

 最近、疲れが取れないと感じている方、何だか体がスッキリしないなと思っている方、心身共に健康で正常な生活リズムを送るためにも、睡眠の質の向上に関心を持ってもらえればと思います。

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