天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第269号

比叡山宗教サミット38周年
「世界平和祈りの集い」を開催

 比叡山宗教サミット38周年「世界平和祈りの集い」が8月4日13時より、比叡山上で開催される。

 戦後80年を迎えた今年は、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表委員を務める田中熙巳さんを招いた講演会を開く。

 そして国内から平和を希求して集う約450 名の宗教者らが戦争犠牲者を追悼し、世界平和を願う祈りを捧げる。

 比叡山宗教サミット「世界平和祈りの集い」は、昭和62年(1987)に開催されて以来、毎年宗教宗派を超えて宗教者が比叡山に集い、世界の恒久平和実現のために協働することを確認し、平和を希求する祈りを捧げてきた。

 ここ近年の天候不順による影響を考慮し、2年前から屋内外での2部制へと移行。本年も延暦寺会館で13時から「平和の式典」の開会式を行う。

 太平洋戦争終戦から80年を迎え昨年ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員を招き「核兵器も戦争もない人間社会を」と題した講演を行っていただく。

 またSDGsの観点から記念品制作費用相当額の浄財を日本ユニセフ協会に寄託する。

 続いて、会場を屋外の一隅を照らす会館前「祈りの広場」に移し15時20分から「平和の祈り」を挙行する。初回に採択された比叡山メッセージを朗読して比叡山宗教サミットの祈りの精神を確認した後、平和の鐘が撞かれ、参加者全員で平和を願い祈りを捧げる。

 続いて主催者を代表し、藤光賢天台座主猊下が“お言葉”を述べられ、海外から寄せられた平和のメッセ ージが披露される。

 なお屋内の「平和の式典」を13時より、屋外の「平和の祈り」を15時20分よりそれぞれ動画配信サイトYouTubeでライブ配信する。プログラムの詳細は左記の通りです。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

「人間が人間に贈ることのできる 最善の贈り物はなんですか。」

 「それはいい思い出です。」

ガブリエル・マルセル(フランスの哲学者)

 先日テレビで、新社会人の初任給についての特集を何気なく見ていました。その使い道について「親へのプレゼント」というのがあり、「今の20代は親へのプレゼントに物ではなく“時間”を贈る傾向がある」という内容をとても興味深く感じました。

 2000年頃までは「ネクタイ」や「衣服」といった“物”をプレゼントする人が多かったのに対し、現在は「一緒に食事をして過ごす」といった答えが目立つそうです。

 インタビューに登場した20代と思しき女性は「形ある物はいつか壊れたり、なくなってしまったりするけど、思い出はその人の中に残るから、一緒に過ごすことがいいプレゼントになるのかなあ」と語っていました。

 現代の若者は「所有」へのこだわりが薄れてきているようです。音楽や映画などを楽しむ方法は今やCDやDVDではなくサブスク(サブスクリプション。月額などの定額制サービスのこと)が普通です。サブスクの波は車や日用品にまで広がっています。

 また、一度だけ着用した服をすぐにメルカリ(個人間で売買できるフリーマーケット式アプリ)で売ることに抵抗がない人も多いといいます。物への愛着は、以前より薄れているのかもしれません。

 では、彼らが大切にしていることはなにか。それは、「今しか体験できないような、一度きりの時間」をどう過ごすかということです。こうした体験型の消費を「トキ消費」と呼ぶそうです。

 「どんなものでもこの世のものは結局は滅びていく。壊れていく。しかし、いい思い出はその人が意識をもっている限り一生続くものです」
 
 マルセル氏は冒頭の言葉に続けてこう語りました。インタビューで答えた女性の言葉とも、偶然にも重なっていました。
 
 もしかすると、現代の若者は、深く「物の本質」を体得しているのかもしれませんね。

鬼手仏心

ともに祈りを

 私の母は昭和8年生まれの現在92歳です。有り難い事に元気にお寺の用事を手伝いつつ、孫やひ孫と楽しく元気に生活しております。

 今年は昭和20年(1945)の太平洋戦争終結より80年を迎えました。

 昭和20年5月29日、当時12歳だった母と家族を横浜大空襲が襲いました。517機ものB29が焼夷弾を投下し、市街地の3分の1が焼失、被害者は8千人以上に上るとされています。

 母は小さな甥っ子を背負い、祖母の手を引き、激しい戦火のなか焼死体をまたぎつつ逃げ惑ったそうです。たまたま電電公社ビルの地下に避難させてもらい生き残ることができました。

 その後、私の自坊である川崎市の遍照寺に縁があり嫁ぎました。両親は川崎大空襲で全焼したお寺の再建に尽力し現在私の代へと引き継がれています。戦争体験を語り継げる方々は年々少なくなっています。これらの方々の記憶や体験を我々は忘れることなく語り伝えていかなければなりません。

 天台宗では本年も8月4日比叡山宗教サミット38周年「世界平和祈りの集い」を開催します。

 戦後80年ということもあり、昨年ノーベル平和賞を受賞された日本原水爆被害者団体協議会より代表委員の田中熙巳さんに講演をしていただきます。

 皆様におかれましても、広島・長崎の慰霊式典や終戦記念日には、現在世界中で多発している戦争や紛争が一日でも早く終結するよう、世界平和を御祈念ください。

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