天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第267号

「御拝堂」で比叡の神仏に上任をご奉告
「傳燈相承式」を6月10日に奉修

 藤光賢天台座主猊下は、歴代の座主名を刻む傳燈相承譜へご署名をされる天台宗最高の慶事である「傳燈相承式」に臨まれる。

 これを前に5月2日に、古式に則り、比叡山全山を巡拝し諸仏諸菩薩諸天善神に座主上任を奉告する「御拝堂」が執り行われた。

 また、皇居、京都御所、聖徳太子御廟など各所をご参拝され、一連の行事を終えられた。

法雨のなか御拝堂へ

 御拝堂当日は、法雨が降り注ぐ中、藤座主猊下は、天台宗と延暦寺の両役員を伴われ、午前9時半に一隅を照らす会館を出立し、根本中堂内陣に入堂された。そして、ご本尊薬師如来ご宝前に、仏法の興隆など、職責に精進する旨を法則に込めて誓われた。

 続いて大講堂、前唐院、戒壇院、阿弥陀堂、東塔での参拝を終えられた。随身時代を過ごされた無動寺明王堂では、千日回峰行者の叡南浩元大阿闍梨らの出迎えを受けられた。

 藤座主猊下の祈りが神仏に届いたのか午後からは雨は止み、西塔「浄土院」で伝教大師御廟、阿弥陀堂、拝殿内それぞれで法楽を捧げられた。

 そして法華堂・常行堂、釈迦堂、横川の諸堂巡拝を終えられ、飯室不動堂へと移動。最終地の滋賀院門跡では、天台宗と延暦寺の役職員、延暦寺学園関係者と生徒が出迎える中、御成門をくぐられ、内仏殿へと進まれた。

 奉告を終えられたあと、謁見の間で獅子王圓明延暦寺執行は「ご上任関連の行事が続きます。ご自愛いただき、われわれをご教導ください」と労いのことばをかけた。

 藤座主猊下は、随行者への感謝を口にされ、「みなさんとご一緒に宗祖伝教大師のみ教えを敷衍したく存じます」と“おことば”を述べられた。

聖徳太子御廟などでご奉告

 5月12日には京都御所、そして日本仏教の礎を築かれ、伝教大師も尊崇された聖徳太子にご上任を奉告されるため、太子ご創建の四天王寺(大阪市天王寺区)を訪問。

 続いて叡福寺(南河内郡太子町)境内にある聖徳太子御廟へと向かわれ、御霊に奉告された。また16日からは、2日間の日程で東京に出向かれ、皇居でご記帳されたほか、寛永寺、深大寺をご参拝。翌17日は、浅草寺、母校である大正大学を訪問され、各所で歓待を受けられた。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

何もかも持って満たされている人が、
さらに「これが欲しい」「あれが欲しい」というのが
貧しさだと思う

ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領

 今年5月に亡くなったホセ・ムヒカ氏は「世界で最も貧しい大統領」として知られていました。

 2010年から5年間務めた大統領時代には、大統領公邸に住まず、収入の9割を貧困層に寄付。自身の生活費は毎月15万円程度だったといいます。

 大統領在任中から退任後も、首都郊外の農場で質素な生活を続け、本棚には数多くの本があふれていたそうです。彼は常に、「シンプルな暮らしを心がけている」と語っていました。

 生前の個人資産は、農場とトラクター、1987年製の車だけだったとされています。

 2012年、国連の地球環境開発会議(リオ会議)でムヒカ氏はスピーチを行いました。そこで彼は、人間が生み出した、「無限の消費と発展を求める社会」が地球環境を破壊していると鋭く批判しました。

 「私たちは(経済)発展するために生まれたのではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を通り過ぎてしまいます。

 命より高価なものは存在しません」「発展が幸せを阻害(そがい)するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。

 愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきです」。

 このスピーチは、多くの国で翻訳され、日本でも絵本として出版されました。

 「自分は質素なだけで貧しいのではない」と言っていたムヒカ氏。心のありようこそが本当の豊かさを決めるというメッセージが伝わってきます。

 現代は、かつてないほど経済が優先される社会となりました。ものにあふれ、新しく良い品を追い求めて慌ただしく生きる私たちに、「本当の豊かさとは何か」を静かに問いかけています。

鬼手仏心

体操の歌「あ・い・うー」

 NHKの「おかあさんといっしょ」で流れる体操の歌「あ・い・うー」が放送からおよそ30年を経て、SNSで脚光を浴びているという。
 しりとりみたいな歌詞。

 こんなに おおきく なっちゃった
 こんなに じゆうに なっちゃった
 くじらに なりたい らっこ
 らっこに なりたい コアラ
 コアラに なりたい ライオン
 ライオンに なりたい おんなのこ
 おんなのこに なりたい おとこのこ
 いいな いいな なれたら いいな…

 この歌には、なりたいものは自由なんだと肯定してくれどんな子どもも“自由に育って”という願いが込められている。
 
 当時、毎日のようにこの歌を歌っていた子どもが親世代となり自身の我が子と向き合うようになった今、この歌に子育てのヒントがあると感じている保護者も多いようだ。
 
 作詞された日暮真三さん(81歳)は、20代の時コピーライターとして、旅先のニューヨークで見た性的マイノリティーの人たちの権利向上を求めるパレードに啓発されて以来、創作活動の中で“自由を表現する”ことに拘(こだわ)り、好きな自分でいられる思いを歌詞に込めたという。

 大人になって周囲から「男性」「女性」と決めつけられるとモヤモヤを感じる人は少なくないであろう。子どもに対しても、無意識に「男の子」「女の子」と分けてしまうと、偏見や差別につながりかねない。

 多様な個性を尊重し合える社会にするために、私たち大人も自身の振る舞いを見つめ直すことが必要であろう。

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