天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第266号

増加する寺院の侵入盗被害
-防犯研修会で意識向上-  群馬教区

 群馬教区(三浦祐俊宗務所長)は4月17日、教区内寺院において頻発している侵入盗被害を憂慮し、教区宗務所において緊急の「防犯研修会」を開催した。警察官や実際に被害にあった住職の講話などを通し、70名の参加者が防犯意識の向上に努めた。

 同研修会は、教区内寺院の安全・安心に資することを目的に、被害状況の共有・防犯意識の向上・具体的な防犯対策等を学習するために開催した。

 近年、寺社を狙った窃盗は増加傾向にあり、警察庁が発表した20 22年に発生した神社仏閣の刑法犯件数は5千を超えている。

 また群馬教区が実施したアンケート調査では、32カ寺が被害にあったという結果が出た。これらの現状から、2月中旬から研修会開催に向けて準備を開始。多方面から招いた講師の話に参加者らは熱心に耳を傾けた。  

 研修会開催にあたり三浦宗務所長は、「令和3年頃から寺院を狙った侵入盗事件が始まり、近年では巧妙な手口も増えている。私たちは、お預かりしている寺院の財産、そして寺族を守るためにも、防犯意識を一層高め、寺院の防犯対策を強化してまいりたい」と挨拶した。  

 研修会前半では、高崎警察署生活安全課、宗務副所長、教区議会議長による講義が行われた。
 
 生活安全課署員は、過去の侵入盗事犯の情報をもとに、狙われやすい寺院の特徴や、犯人が嫌がる効果的な防犯対策等を紹介。もし犯人と対峙してしまった場合には、何よりも人命を最優先するよう強調した。 
 
 続いて眞木興空宗務副所長が、研修会開催に先立って実施された「教区被害状況調査」の結果を報告。教区内の一割を超える寺院が侵入盗被害にあっていることや、被害の多くに共通する侵入手段、発生時刻等が報告された。  

 また実際に侵入被害にあった林祐進教区議会議長(南前橋部光琳寺住職)からは、被害当時の具体的な様子が報告された。併せて部内複数寺院で同時多発的に発生した侵入盗事案を受け、LINEグループ等による早期の情報共有と、教区宗務所への被害報告の必要性が語られた。

 研修会後半では、天台宗災害補償制度の村上憲一郎氏から、盗難被害補償に関する説明、並びに民間警備会社2社による、デモンストレーションを含む具体的な防犯警備システムの紹介も行われた。
 
 多岐にわたる講義内容により同研修会は、参加者各位が自坊の安全に向けて多くの情報を得る有意義なものとなった。 (報告=大沢亮智通信員)

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

地球は先祖から受け継いでいるのではない、
子どもたちから借りたものだ

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

「星の王子さま」でよく知られているフランスの元パイロットで小説家の サン=テグジュペリの言葉です。

 地球自体のことを考えると、地球の年齢は46億年といわれるように途方もない数字になります。 30億年後には、太陽はますます膨張し、地球の表面は沸騰、乾燥してしまうといわれています。
 
 そして、地表の温度が10 0度を超えたら、地球上の生命はほぼ死に絶えるそうです。人間が死に絶えるのは、おそらく他の生き物より早い時期になることでしょう。  

 そんな地球の歴史の中で人類の歴史はその時間のほんの一瞬に過ぎません。それでも人間にとっては、とても長い時間です。その歴史は人類が滅亡するまで閉じません。

 未来の人々のために現代に生きる私たちには、その歴史を閉じる権利がないことは自明なことでしょう。滅亡するまでは、この地球を生かさねばなりません。そう思うと冒頭に掲げた言葉がよく分かります。

 人類の歴史上、今ほど地球滅亡の危機を感じる時はありません。世界各地、特に中東地域での紛争は、収束の目処もたちません。またロシアによるウクライナ侵攻も依然として続いています。プーチン大統領は核戦争も辞さない姿勢を見せています。いつ核兵器が使用されてもおかしくありません。

 地球の環境面でも危機が叫ばれています。温暖化の影響は世界各地域で起っています。それに対し、原因となる温室効果ガス削減などいろいろ対策が打ち出されていますが、遅々として効果は上がっていません。

 では、このような状況の下、現代に生きる私たちが肝に銘じておかなければならないことはなんでしょうか。それは、子どもたちをはじめ未来に生きる人々にできうる限りの快適な地球環境を約束することでしょう。

 私たちは「今の自分たちの為だけに地球はある」とする傲慢な考えから抜け出さなければならないと思います。

鬼手仏心

お稲荷さま

 天台宗務庁の片隅にお稲荷さまが祀られているのをご存知ですか?  

 昨年12月に「お火焚法要」、そして今年2月には「初午法要」を稲荷社前にて奉修しました。この法要があるまでは、お稲荷さまには気にも留めませんでした。

 一般的に「お稲荷さま」ほど生活に密着した信仰は他に類を見ません。私の地元、栃木県の農村部には、各農家が屋敷神としてそれぞれ邸内に小祠を建てて祀り、五穀豊穣と家内安全等を祈願しています。

 自坊の「全水寺年中行事」の記録には、村人達が「お日待ち」と称して飲食し、 初午には赤飯を炊いて稲荷社に供え参詣者に振舞ったとされています。

 また「赤飯の他、煮〆をつくり、小豆・醤油・豆腐を購入、さらにベニガラを買い」とあるので、朱色鳥居の塗替えも行われたのでしょう。

 法要に参加した時、お稲荷さまを囲う朱塗の玉垣(柵)が腐食していることに気が付きました。放置しておくと朽ちてしまうため、早急に対応する必要性があり、その旨を財務課に相談し、補修の許可をもらいました。
 
 早速、地元の大工に必要な大きさの木片を依頼。自分一人では困難のため、初日は総務課のM君、意外にも積極的な財務部長にも手伝ってもらい、玉垣の木片20枚の製材とペンキ塗りを行いました。

 2日目は教学課の器用なA君と木片を打ち付ける作業を行い、素人ながらも無事終了。出来栄えはともかく皆んなでやり切った達成感で、清々しい気持ちになりました。  

 次回よりお稲荷さまの法要前には、鳥居や玉垣を修繕して臨むよう心がけたいと思います。

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