天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第265号

“不滅の法灯”が EXPO2025大阪・関西万博へ
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会

 EXPO2025大阪・関西万博(4月13日開幕)に伝教大師最澄1200年魅力交流委員会(鳥井信吾委員長・サントリーHD(株)代表取締役副会長)が参加することが決まった。
 
 7月24日の滋賀県デイ「~びわ湖サマークルーズ~」 において分灯された「不滅の法灯」を奉安し、天台声明を披露する。
 
 平和を願い1200年受け継がれてきた天台宗と比叡山延暦寺の祈りが世界の人々に紹介される。

 EXPOホール「シャインハット」で滋賀県の魅力を伝える一日イベントの中で『比叡山延暦寺1200年の伝承“不滅の法灯”奉安と天台声明の調べ』を主題に出演する。  

 舞台では、比叡山延暦寺の自然と根本中堂の「不滅の法灯」が分灯される様子が映像で流れる中、歴史や法灯について大学コラボプロジェクトの参加学生が朗読し紹介する。そして天台宗僧侶約40名による天台声明が披露され、世界の平和と人々の安寧が祈られる。

 同委員会は、令和3年6月の宗祖伝教大師一千二百年大遠忌に向けて「伝承~心の灯~」をテーマとして令和元年5月に発足。滋賀県と京都府をまたぐ比叡山を中心に官民学宗が集い宗祖伝教大師の魅力、日本文化を次世代へ繋ぎ伝えることを目的に活動している。

 今回の参加はその一環とし、『いのち輝く未来社会のデザイン』をテーマとする大阪・関西万博において、「人から人へと紡がれるいのちの尊さを伝え、世界平和を祈ってまいります」としている。

 また同委員会幹事の細野舜海天台宗宗務総長は「伝教大師のご精神を世界に向けて発信していきたい」と意気込みを話している。  滋賀県デイの開催日は7月24日(木)。

 なお万博開催期間に合わせて比叡山延暦寺国宝殿では「2025大阪・関西万博特別企画『密教体験│曼荼羅と仏たち│(仮)』」が催される。延暦寺関連のパネル展示。

 また灌頂儀式の映像と堂内が再現される中、曼荼羅の上に花を投じてみ仏とご縁を結ぶ結縁灌頂の密教体験ができる。  

 4月19日(土)~5月11日(日)、7月19日(土)~11月24日(月祝)。各期間内の土日祝のみ開催される。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

いかりは敵と思え  

徳川 家康

 最近怒っている人の存在を多く感じます。駅員や店員を怒鳴(どな)りつける客。部下に必要以上に当たり散らす上司。SNSなどによって、これまで個々人が「あの人は嫌だな。あんなことでひどく怒ってみっともないな」と思っていたことを多くの人が共有するようになったともいえるでしょう。  
 
 人は心から湧き上がる「怒り」という感情をうまく制御することができない生き物です。仏教でも「怒り」は三毒「貪瞋痴(とんじんち)」のひとつ「瞋(じん)」として挙げています。簡単に克服できる感情ではありません。  

 「堪忍は無事長久の基 いかりは敵と思え」(がまんすることが無事に長く安らかにいられる基礎であり「怒り」は敵と思いなさい)この言葉を遺訓(いくん)として残したとされる徳川家康は、忍耐強く、耐え抜いた末に天下を取った人物として広く知られています。

 しかし、実は頭に血が上りやすい人物でもあったようです。戦いで事態が切迫すると鞍(くら)の前輪(まえわ)を血が出るほど叩く癖(くせ)があったり、家康の主治医の著書には関ヶ原の戦いにおいて家康がヒステリーを起こしたエピソードも描かれています。それを乗り越えたからこそ、天下を取って治めることができたのでしょう。

 孔子は「怒り」について、「怒りには、難を思う」(怒りたくなったら、怒った後の面倒を思いなさい)と言いました。これは奇(く)しくも、古代ローマの哲人皇帝マルクス・アウレリウスの「怒りの結果は怒りの原因よりはるかに重大である」の教えと通じるものがあります。

 孔子やマルクス・アウレリウスは、怒りのままに振る舞うことで生じる結果が決して良いものではないと教えています。他人から「みっともない」と思われることもそうです。
 つまり「怒り」にはほとんど益(えき)がないのです。まさに「敵」なのだと心にとどめたいものです。

鬼手仏心

スタートの季節

 最大級の寒波に幾度も襲われた今冬でしたが、春の訪れで、草木も芽吹き、生き物たちが、生き生きと活動をはじめる季節となりました。季節の移り変わりに、時の流れを感じます。  

 さて、人は、絶えず流れる時間の中を、とどまることなく歩みを進めています。そうした時の流れの中で、多くの人にとって、4月は一種の特別な季節なのではないでしょうか。

 4月は、入学式や入社式など、人生の新たなスタートを切る季節です。別の言い方をすれば、今まで自分が培ってきた人や社会との繋がりから離れ、まだ見ぬ未知の世界へと、一歩、足を踏み入れる瞬間でもあります。  

  夢や希望に満ちあふれている人ばかりではなく、不安を抱えブルーな気持ちになる人もいるのではないでしょうか。そうした人たちに届けたい言葉が一つあります。
 「どんなに悔いても、過去は変わらない。どれほど心配したところで、未来もどうなるものでもない。今、現在に最善を尽くすことである」  

 日本を代表する電機メーカーであるパナソニック株式会社の創業者であり、「経営の神様」とも呼ばれた松下幸之助氏の名言です。

 夢に向かって、まっしぐらに突っ走っている人、足下を見失わないように「今、現在に最善を尽くしましょう」。  

 未知なる世界に不安を感じ、心配を重ね、思い切って一歩を踏み出せないでいる人、ジッとしていないで「今、現在に最善を尽くしましょう」。

  この「今、現在に最善を尽くしましょう」という言葉。その意とするところは、「一隅を照らす」ともいえるのではないでしょうか。

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