天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第258号

比叡山宗教サミット37周年「世界平和祈りの集い」
-祈りの精神を次世代へ-

比叡山宗教サミット37周年「世界平和祈りの集い」が8月4日、比叡山上にて開催され、諸宗教の代表者ら420名が共に世界平和へ祈りを捧げた。受け継がれてきた集いの精神を次世代へ継承するため、本年は若手宗教者の参画が積極的に推進された。(4・5面に関連記事)

 連日の酷暑を考慮した熱中症対策として昨年に続き屋内外の2部構成の形をとり、延暦寺会館で「平和の式典」を、一隅を照らす会館前「祈りの広場」で「平和の祈り」を実施。3年後には40周年の節目を迎えるにあたり、祈りの意義と精神を継承することを目的に、広い世代や立場からの参画を得た。

 例年宗教者が登壇していた「平和を語る」では、より幅広く多角的な視点から平和の意義や宗教者の責務を考えるため、ペシャワール会PMS(ピースジャパン・メディカル・サービス)支援室室長の藤田千代子さんを講師に招いた。「平和の力を信じ――中村先生の意志を継いで――」と題して、故中村哲医師と共に歩んだパキスタン・アフガニスタンでの医療活動や、食糧支援、用水路建設といった経験を振り返り、現地の厳しい状況や平和の尊さを伝えた。

 またこの集いの「祈りの精神」を将来へ継承するための取り組みを始めており、若手宗教者にも参加を呼びかけた。次世代を担う宗教者を代表して、教派神道連合会から北川真喜子さん、神社神道から金子元紀さんが『比叡山メッセージ』を朗読。先達らによって紡がれてきた精神を再び胸に刻み、平和に向けた宗教者の使命と責務を再確認した。

 「平和の祈り」では大樹孝啓天台座主猊下ら9人の教宗派代表者が登壇し、文殊楼横にある「世界平和の鐘」を天台仏教青年連盟の杉谷義恭代表と甲斐健盛副代表、小林伯裕副代表が鐘打。荘厳な鐘の響きに包まれる中、会場の参加者全員で黙祷し世界平和へ祈りを捧げた。

 主催者代表として挨拶された大樹座主猊下は、「世界では大規模な自然災害や武力紛争が続き、命を落としている人々が多くおられる。

 一刻も早い復興と和解へ向かうよう、共に強く祈り続けたい」と呼びかけられた。当日、YouTubeで生配信された「平和の祈り」の模様は、公式サイトにてアーカイブ動画の視聴が可能。


 宮崎県日向灘を震源とする地震により、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
天    台    宗
一隅を照らす運動総本部

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

夕月夜 心もしのに白露の
      置くこの庭に蟋蟀(こおろぎ)鳴くも

(月が浮かぶ夕暮れ、心がうち萎れるほどに、白露の降りた庭の草木の陰で蟋蟀が鳴いているよ)

『万葉集』

天智天皇の孫、湯原王(ゆはらのおおきみ)による一首です。

 8世紀頃から、和歌の世界では虫の声を題材に多くの歌人が和歌を詠み、平安貴族の間では虫を飼育し鳴き声を楽しむことが娯楽のひとつでした。

 特に蟋蟀は秋風や月と共に愁いを帯びた秋を表現するために用いられます。この和歌では、もの悲しくも涼しい秋の夜の情景が頭の中に浮かびます。「心もしのに」とありますから、ないているのは本当に虫達だけなのだろうかと、想像する余地がありそうです。

 連日の気象予報で30度を越える真夏日と報じられても驚かなくなるほど日中は暑さが続きますが、夜になると秋の虫の声が聞こえてくるようになってきました。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉通りにこのまま気温が落ち着くことを待ち望む今日この頃です。

 お彼岸といえば、春は春分の日、秋は秋分の日を中心とした7日間を指します。現在ではその期間にお墓参りをすることが慣例となっていますが実は、お彼岸の起源は別のところにありました。語源であるサンスクリット語を訳した「到彼岸」から来ており、彼岸に到るための期間、つまり悟りを開いて仏に近づくためにより一層修行に邁進しようという期間であると言われています。

 また、お彼岸の時期は太陽が真西に沈むことから、西方極楽浄土を思いながら沈みゆく太陽を拝むように説いたお経もあります。

 大切な方、ご先祖さま、そして極楽浄土を思いながら沈みゆく太陽へ手を合わせてみてはどうでしょうか。

鬼手仏心

時間感覚と年齢

 子供の頃は1日が長く感じられたのに、年を取るほど短く感じるようになった」と思われたことはありませんか?
 
 幼い頃は学校で過ごす時間を長く感じ、家に帰ってからも遊ぶ時間がたっぷりとあったように思います。でも、年を取ったら、何をしていたかわからないうちに、気が付けば夜になっています。

 年齢と時間の感覚についての「ジャネーの法則」というものがあります。年齢を重ねるにつれて時間の流れがどんどん早く感じるようになるというもので、たとえば1歳のときに感じた1年が、10歳のときには10倍速く過ぎたように感じられるというのです。100歳なら100倍!?

 時間の感覚が変わっていくのは、年齢を重ねるにつれて新しく経験することが減っていくからだそうです。大人になると同じことの繰り返しが多くなり、それに脳が慣れてしまって、「新しいことがない一日だった」という感覚になっていきます。子どもの頃のように、毎日が新鮮で新しい出会いや発見があれば、時間が長く感じられるのだそうです。

 人の老化は、「体力」や「知力」に先んじて「感情」から始まるといいます。感情のコントロール、自発性や意欲の減退は、40歳代から始まっているそうです。あっという間に時間が過ぎるというのも、感情の老化現象かもしれません。感動や気力の減少に伴って、頭や体も老化していくわけです。

 同じ時間なのに、何の感慨もなく、あっという間に時を過ごすのは勿体ない気がします。なんとか抗したいと思われませんか?

 適度なストレスや困難を感じるようなチャレンジを楽しみながら、自らの感情の老化に楯突くのも一興だろうと思っています。

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