天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第238号

慈愛の心で助け合い――天台宗全国一斉托鉢

 天台宗では毎年12月1日に全国一斉托鉢を行っており、昨年も各教区や各部など全国で実施された。37回を数え「師走の風物詩」と親しまれている。この日を含め、寄せられた浄財は一隅を照らす運動総本部の地球救援募金などを通じて国内外の福祉活動等への支援に活用される。

 全国一斉托鉢は「宗祖伝教大師の精神を現代に生かそう」と昭和61年に始められ、当時の故山田惠諦天台座主猊下も自ら先頭にたって浄財を集められた。

 平成9年(1997)からは12月を「地球救援活動強化月間」と定め、12月1日を全国一斉托鉢の日とし、「慈愛の心で助け合い」をスローガンに一隅を照らす運動の各教区本部、個別寺院単位で実施されている。

 こうした毎年の取り組みが師走の行事として定着。全国の約41カ所では、托鉢行脚はじめ、街頭募金やバザーなど様々な方法で実施されており、心がこもった浄財が全国から年々多く寄せられている。
 
 同日に比叡山麓坂本地区で行われた托鉢には、大樹孝啓天台座主猊下を先頭に、阿部昌宏天台宗宗務総長、水尾寂芳延暦寺執行、延暦寺一山住職並びに職員、天台宗務庁役職員ら約100名が参加。宗祖生誕の地・生源寺で大樹座主猊下の導師で法楽後、坂本地区の里道を戸口で読経しながら托鉢行脚を開始した。

 玄関口で待ち受ける人も多く、心を込めた言葉を添えて大樹座主猊下に浄財を託す方もいた。また戸別托鉢、JRや私鉄の駅で街頭募金も実施された。

 なお寄せられた浄財は、NHK歳末たすけあいと同海外たすけあいの他、各地の社会福祉協議会や日本赤十字社に寄託される。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

 今まで出来ていたことを授かっていたこととお思いになるのか、お出来にならないことを「お返しした」と表現され、受け止めていらっしゃるご様子です

「上皇后陛下のご近況について(お誕生日に際し)」 令和2年 宮内庁

 できることを「授かる」、できなくなったことを「お返しする」という言葉にありがたく感じる1年でした。
 
 私事ですが、今年は病を得たり、さらに大けがをしたことが原因で、1年前までできていたことをいくつも手放すことになり、気持ちが沈みがちだったこともあります。

 人は赤子の時は、立った、しゃべったなどとできることが増えていき、周りを喜ばせていきます。そして、やがて年を取り老いるにしたがって、あれができなくなった、これができなくなった、とあきらめることが増えていき、自身が落ち込んでいきます。

 美智子上皇后陛下は令和2年のお誕生日を迎えるにあたり、ご病気や治療の後遺症で、楽しみとされていたピアノを弾くことが難しくなられていたと伺っております。国民にはうかがい知れないような御苦労をたくさん背負われていらっしゃる中で、慰め、楽しみを手放さなければならない辛さはいかばかりかと拝察いたします。

 「お返しした」と表現される美智子様の、人としての気高さ、穏やかさを感じずにおれません。

 「地獄極楽は心にあり」ということわざがあります。仏教にいう地獄と極楽は、あの世にあるものではなく、自らの心の中にある、というものです。

 心の持ちようで、この世は地獄にも極楽にもなる。できなくなったこと、自身が手放さなければならなくなったことを、今までは「授かっていた」ことを「お返しする」ことと受け止める。そうして、年を重ねること、自身が不自由になることを受け止めていけたら、と思うのです。

 昨年も様々な困難が世の中を覆っていましたが、新しい年を極楽のように受け止められるかは私たちの心の持ちようも大きいのでしょう。

 皆様にとって新年が素晴らしい年となりますよう、祈念いたします。

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