天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 号外

発行日:2021/11/23
森川天台座主猊下がご遷化

 第二百五十七世天台座主大僧正森川宏映猊下が、11月22日午前7時30分、ご遷化された。世寿97歳。ご上任以来、祖師先徳鑽仰大法会第二期の各法要や事業の推進を先頭に立ってご教導下さったほか、比叡山宗教サミットを通してローマ教皇はじめ世界の宗教者と親交を深められるなど、「世界平和」実現に尽力された。

 森川座主猊下のご遷化に伴い、兵庫教区書寫山圓教寺住職の大樹孝啓探題大僧正(97)が、天台宗の古来の定めにより第二百五十八世天台座主に上任された。

 森川宏映座主猊下は、大正14年10月22日生まれ。愛知県春日井市出身。京都大学農学部で学ばれた。
 昭和25年に延暦寺一山眞藏院住職となられ、平成11年には毘沙門堂門跡門主に推されてご就任された。平成27年12月14日、第二百五十六世半田孝淳天台座主猊下のご遷化に伴い、同日、第二百五十七世天台座主猊下に上任された。

 天台宗並びに総本山関係では、昭和39年に延暦寺副執行・営繕部長に就任され、同部長を通算3期勤められた後、昭和52年4月からは延暦寺学園比叡山高等学校・中学校校長、比叡山幼稚園園長を歴任。そのほか、天台宗宗議会議員、一隅を照らす運動会長などの各要職を勤められた。

 「わたしは比叡山の山林保護を志し、農学部を卒業しました」。
 座主就任会見でそう語られた森川座主猊下。
 比叡山の山林を伝教大師の〝お衣”と考えるゆかしい伝統を尊重され、「山林の仕事を通して、自ら天台本覚思想が身につきました」とも述べられていた。

 また、人間ばかりでなく、動植物、鉱物などあらゆる存在は仏性を持ち、成仏できるとする天台本覚思想の『草木国土悉皆成仏』という考え方について「私はこれこそが仏教の中心思想だと思っております」と強調され、ご親教では、檀信徒に判りやすく説かれていた。

 そして地球温暖化や、生態系の変化、自然災害の猛威などを常々憂慮され、「環境破壊の問題を解決するのは「草木国土悉皆成仏」ではないか。これは人間と自然とが共生して生きる考えだと思う」との持論を、日頃からお言葉を通じて伝えられていた。

 東日本大震災被災地では七回忌法要をお勤めになり、多発する自然災害の被災地にも心を寄せられていた。
 また、諸宗教対話を通して世界平和にも献身されている。

 比叡山宗教サミットが30周年を1年後に控えた平成28年9月に、イタリア・アッシジで開かれた「世界宗教者平和の祈りの集い」に出席。バチカンを訪問され、第266代ローマ教皇フランシスコ聖下と会見し、比叡山宗教サミットへの出席を要請する親書を手渡された。
 その翌日には、世界の宗教者らと世界平和の祈りを捧げられ、主催者も森川天台座主猊下のご臨席を「アッシジの精神が、比叡山宗教サミットとして脈々と東方世界に受け継がれている」と称え、大きな拍手が鳴り止まなかった。

 2019年にローマ教皇が来日した際にも、仏教を代表して招待され、広島で固い握手を交わされた。
 世界的に流行する新型コロナウイルス感染症に対しても、宗祖伝教大師の「忘己利他」の精神で日々の生活を過ごすようメッセージを発信し続けられていた。

 今年迎えた宗祖伝教大師一千二百年大遠忌御祥当法要の大導師を勤められ、疫病収束と世界平和を願い、宝前に報恩の誠を捧げられた。
 密葬儀は11月26日に滋賀院門跡にて執り行われる。




森川座主を偲ぶ――天台宗宗務総長 阿部昌宏


 謹んで第二百五十七世天台座主森川宏映猊下のご遷化を悼み、心よりご冥福をお祈り申し上げます。森川猊下からは1年前の宗務総長・参務任命式の際、「天台宗をまとめ、世の中をリードし、伝教大師のみ教えが多くの方々から信仰されるよう願う」とのお言葉を賜りました。そのことを拳拳服膺しつつ今後の宗務に精励いたしてまいります。 合掌

ページの先頭へ戻る