天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第220号

宗祖伝教大師一千二百年大遠忌御祥当法要

 十年間に亘る祖師先徳鑽仰大法会の掉尾(ちょうび)を飾る宗祖伝教大師一千二百年大遠忌御祥当法要が6月3日~5日、比叡山延暦寺大講堂において厳かに執り行われた。コロナ禍による感染防止対策として出仕や随喜者数を制限したが、法要の模様は3日間ともに初のインターネットを通じた全国中継を実施。連日の法要では伝教大師の遺徳を偲ぶ「伝教大師和讃」が唱えられ、宗祖への報恩謝徳が示された。

 宗祖伝教大師一千二百年大遠忌御祥当法要は、3日の御祥当逮夜法要を伝教大師御影供(みえく)、4日の御祥当法要を常行三昧、5日の御祥当後法要を胎蔵界曼荼羅供で厳修した。

 当初は、3日に教宗派の代表者、大乗連盟、伝教大師連盟の方々による随喜、4日は宗務所長の出仕と宗機顧問、門跡大寺、法灯護持会、魅力交流委員の参列。そして5日は一般参拝者にも開放する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から内容を一部変更して営み、当初から決まっていたインターネットによるライブ配信を通じて各寺院や自宅からの随喜を事前に呼びかけていた。

 祥当日前日の3日は、森川宏映天台座主猊下を大導師に、延暦寺一山住職が出仕。内陣須弥壇(しゅみだん)中央に奉安された伝教大師御影に、功績を讃えた祭文が朗々と奉じられた。

 ご命日の4日は、午前中に御廟の浄土院で論義法要「長講会」が執り行われ、午後から祥当法要を厳修。根本中堂から分灯された不滅の法灯を先頭に出仕僧らが入堂し、大導師の森川天台座主猊下が法則(ほっそく)で伝教大師に報謝を捧げられた。

 最終日となる5日の御祥当後法要は、大樹孝啓探題大僧正を大阿闍梨に天台宗・延暦寺両内局員、延暦寺一山住職の出仕で勤められ、宗祖への恩徳が示された。

 4日の祥当法要で挨拶した阿部昌宏宗務総長は「人々を救済するために、最澄さまは私たち、そして皆さまの側(そば)におられます。共に正しい修行に努(つと)め、自らの心の中の仏性を磨きましょう」と、すべての人びとに呼びかけた。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

ほんとうにどんなつらいことでも
それがただしいみちを進む中でのできごとなら
峠の上り下りもみんなほんとうの幸福に近づく
一あしずつですから

宮沢賢治(『銀河鉄道の夜』より)

 今年も七夕の時期が近づいてきましたが、天の川といえばこちらの作品を連想する方もいるのではないでしょうか。今回の言葉は主人公ジョバンニ達と共に銀河鉄道に乗り合わせた灯台守が、海難事故に巻き込まれた後に銀河鉄道に乗ることになった青年達にかけた言葉です。

 私たちの身の回りは思い通りにいかないことで溢れています。自分自身がどれだけ注意を払おうとトラブルに巻き込まれることもあるでしょうし、これまで苦労し乗り越えた先に更なる試練が待ち受けていることだって容易にあります。しかし同時に、掲げた言葉が示すとおり全ての事象は互いに繋がり合って存在しています。つまり、苦しみや辛い出来事も幸福へと繋がって変化していくものだということです。

 「けれどほんとうのさいわいは一体何だろう」物語の終盤、ジョバンニは問いかけます。幸せの定義は人それぞれではありますが、お釈迦様は「涅槃寂静」という言葉を遺されています。それは、煩悩をなくしあらゆる変化に惑わされることなく穏やかなに日々を暮らすことで、結果的に幸せに生きられるということです。

 現在では名の知れた文豪である賢治ですが生前に発表した作品は『春と修羅』と『注文の多い料理店』のみ。しかも二作品とも自費出版にくわえ、売上も芳しくなかったようです。

 その作家人生は決して順風満帆ではなかったでしょう。それでも病魔に侵された体を押して、死の間際まで文字を書き続けたのです。「ほんとうの幸福」にたどり着く事をひたすら信じて。

鬼手仏心

コロナ禍の子ども達

 コロナ禍で、昨年に引き続いて世の中は大変な状態が続いています。

 各分野においても、テレワークやウェブ会議など新たな仕事の仕方が登場しました。日常の暮らしが一変し、その状況にまだまだ慣れない人も多いことと思います。緊急事態宣言が発出された地域では、さらに制限が多くなって、精神的にかなり窮屈な思いをした人も多いでしょう。

 特に、子どもたちにとっては、ストレスが溜まることだろうと思います。そのための対応は、我が寺の幼稚園でもいろいろと考えねばならず、様々に神経を使います。

 何しろコロナ禍における対応は、初めてのことばかりだから、不安がつのります。大人たちの行動を見て、子どもたちもいろいろと自分の行動を決めていきますが、その時に注意したいのは、子どもたちの不安をかき立てることです。それは禁物と思います。

 一番心配なのは、子どもたちの健康でしょうか。場合によっては、外での密になる運動を制限することもあるでしょう。1カ月身体を動かさないでいると体力が衰えます。元の体力に戻るまでに3カ月必要だそうですから、日々の運動が大切になります。

 それに、心身一如といいますから、メンタル面での影響も考えねばなりません。なんといっても、子どもは活発に動き回るのが身上ですからね。

 このコロナウイルスは、今のところ子どもたちを重症化させる傾向が少ないようで、ちょっと安心ですが、これからどのような症状が出てくるかわかりません。はやく収束を願うばかりです。

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